Confusion!!(修正前)
5.
『「ちっ!ルパ……世かテメ……は!大人し……縄……しろ!」』
画面の向こうの葛原さんはそれを見てそう捨て台詞を残し、謎の飛行物体を追いかけ始める。
『ああっ!御覧下さい!交通機動隊員が何かを叫んで追いかけ始めました!わっ、我々もあの謎の飛行物体を追い続けたいと思います!』
一方レポーター達はそう叫びながら取材車両に乗り込み、白バイの後を追うべくエンジンを噴かし始めた。
慌ただしい池袋の様子を見ながら、私はおもむろにこう呟く。
「やっぱりセルティさん凄いですね。あんな風にど派手に逃げちゃうなんて」
「いや、セルティは裏をかいたんだよ」
「?」
どういう事なんだろう?
臨也さんは私の疑問に答える事なく、テーブル上の充電ホルダーから携帯電話を拾い上げた。
そして、彼は静かに一つの番号を呼び出した。
電話の相手は中々繋がらなかったようだが、何度目かになってから臨也さんの顔が華やぐ。
「ああ、やっと繋がった。……やあセルティ。随分と困ってるみたいじゃないか」
「!」
私は咄嗟に口元を押さえる。
電話の相手って、セルティさんだったのか。
「何で俺がそっちの情報を知ってるのか疑問に思ってるんだろう?安心してくれ、別に君に盗聴器とか仕掛けてるわけじゃない。そんなのを仕掛けた所で新羅の奴にすぐに発見されるからね。あいつ、よっぽど君を独り占めしたいらしくて絶対に君らの家のプライベートを覗き見させないんだよ」
「私には仕掛けた癖に……」
凄く小さな声でそう言ったつもりだったのに、臨也さんには私の声が聞こえたらしく、軽く私を睨み付けてきた。
どんだけ地獄耳なんですか。
「しかし、考えたよねえ。まさかーグライダーと君とバイクの偽物を全部影で作って、それを飛ばして囮に使うなんてね」
!?
じゃあ、あの大掛かりな仕掛けは、全部偽物だったのか。
「ああ、大丈夫だよ。よっぽど君の事に詳しい奴じゃないと、あれが偽物だとは気付かないからさ。
色付きのヘルメットが見あたらなかったし、あの程度のスピードじゃ白バイは振り切れないって君なら理解してるだろうしね」
今の臨也さんは、情報屋と言うよりは探偵気取りだろう。
自分の推理を自慢気に語っている。
「まあ、明日から暫く、凄く大変な事になると思うから、一つだけ言っておこうと思ってね」
臨也さんは楽しそうな笑みを浮かべ、ソファに座り直した。
「ごたごたが落ち着くまでさあ、仕事場には絶対に来ないでね。
詳しくはメール送るけど、それを確認する前に来られたら困るからさ」
……は?
全くもって意味が解らない。
「それじゃあね、武運を祈ってるよ」
……武運?
謎の発言を幾つか残したまま、臨也さんは電話を切ってしまった。
「あの、臨也さん。
これからセルティさんに何が起こるんですか?」
臨也さんはニコリと笑うだけで何も答えてくれない。
この事に関しては、ただ一言、「今に解るよ」としか言葉を発さなかった。
(……不安だ)
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