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Confusion!!(修正前)
4.
あれから数時間後ー


「ただいま帰りましたー」


家に着くと、臨也さんは寛いだ様子でソファに座ってテレビを見ていた。


「あー、おかえり珠音」

「何やってるんですか」

「んー?TVを見てるんだけど」

「仕事は」

「俺の分はもう終わってるし、あとは波江さんがやってくれてるよ」

「……暇なんですね」

「そうなんだよ。最近なんだか退屈でさ。
色々面白い事が起こる気配はあるんだけど、俺はあんまり関係ないみたいだし。
だからさ珠音、俺と飯でも食べに行かない?」

「波江さんが一緒なら考えない事もないですよ」

「……だってさ、波江。どう?行かない?」


臨也さんはそう言って波江さんに顔を向ける。


「食事なんか行って、貴方達と何を話すっていうの?どうせ貴方達の似非惚気話に付き合わされる羽目になるだけでしょう」

「あはは、似非惚気話ねえ」

「波江さん、私、臨也さんと惚気話なんかした事ありませんけど」


臨也さんと惚気話……
全く想像がつかないんだけど。


「そうかしら?私には貴方達の日常的な会話は全部惚気話に聞こえるわよ」


波江さんは意地悪くそう言って笑みを浮かべると、自分の仕事に戻ってしまった。
その笑みを見て、私は思わずブルリと震える。
改めて波江さんの恐ろしさに気付かされた気がした。

ちょうどその時、TVで緊急速報が始まったと言うアナウンスが流れる。


「……?」


何が始まったんだろう。
私は臨也さんとは少し間を空けて隣に腰掛け、TVの画面を凝視した。


「もっとこっちに来なよ」

「え?いいですよ此処で」

「まあまあそう言わずにさ」


臨也さんは私の腕を引っ張ると、私を自分のすぐ隣に移動させる。
しかも、移動させた瞬間、私の肩を組むというおまけが漏れなくついてきた。
これでは離れるに離れられない。


「離して下さいよ」

「いいじゃんいいじゃん。折角なんだからさ、波江さんに似非惚気シーンでも見せつけてあげようよ」

「はぁ?嫌ですよそんなの」


臨也さんは私の意見に耳を傾ける事なく再びTV画面に目を向ける。

ほんっとに狡い人だ。

私も諦めてTVを見ると、セルティさんと白バイがクライムアクションのようなものを繰り広げている所だった。


「……あー。流石の俺も、この状況は予想できなかった」


私にも、何が起きているかさっぱり解らない。
って言うか、セルティさんはどうして交機に追いかけられているんだ。


「あの白バイが噂に聞いてた葛原金之助って奴かな?タイミングがいいんだか悪いんだか」


臨也さんは笑っているのか呆れているのか、目を細めたまま息を吐く。


「あの……これ、どういう状況なんですか?」

「んー、一言で言えば、大王テレビってTV局が伝説の首無ライダーを取材しようとしたら、セルティを取り締まろうとしている葛原金之助っていう白バイに偶々見つかってしまい、セルティが白バイから逃げている様子を大王テレビが緊急で中継してる……ってとこかな」

「なるほど」



その時、緊迫した調子のレポーターの声がTVから流れる。


『御覧下さい!どういった仕掛けを用いたのか、馬のようなものに騎乗した不審人物が、ビルの外壁を上って屋上へと移動しました!今、交通機動隊の方が無線で応援を呼んでいる模様です!……』

「……セルティは本当に俺の予想外の動きをしてくれるね、良かれ悪かれ」


臨也さんの言葉は、最早私に語りかけているのではなく独り言に近かった。
私は、彼の邪魔をしないように黙って画面を見つめる。
セルティさんが無事に交機から逃れられるように祈りながら。


「あーあー。セルティみたいな存在は、現代社会じゃいないって事になってるのにねえ。むしろセルティが映画に出てくるような宇宙人とかだったら、国や軍が勝手にもみ消してくれるんだろうけどーまあ、無理だろうねえ」


そんな事を言いながら、ケラケラと笑う臨也さん。
私は何か言い返そうと思ったけどー目の前で画面の中に変化が起こる。


『あっ!あれは何でしょうか!カメラ越しに解りますでしょうか!我々の頭上から星が消えています!黒い!黒い大きな幕が!う、うわあ!?』


レポーターの焦った声と共に、テレビカメラに奇妙な物が映し出される。


「何これ……?」


私は思わずそう呟いていた。
それは漆黒のハンググライダーであり、その中央には馬に跨った人影がぶら下がっているように見える。
でも、それにしては余りに翼が巨大過ぎる。
大きさは既にマンションの幅を超えており、ちょっとした戦闘機よりも大きな羽で星の光を遮っていた。
骨組みの見あたらぬグライダーは、大きさに反して全く質量を感じさせず、軽やかに空気の上を滑る姿は紙飛行機のようだった。
平べったく空を支配する巨影はそのままマンションの谷間から吹く風に乗り、池袋の町を眺める形で低空飛行を開始した。

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