Confusion!!(修正前) 3. 「やばい」 どうしよう。 どうしようどうしようどうしよう……! 自室に入ってからバッグの中身を整理していたら、学生証がなくなっていた。 いや、正確に言うと、私の学生証はなくなっていたけれど、代わりに別の誰かの学生証を持って来てしまっていた。 「これ、来良学園の学生証? って事は……」 クルリちゃんかマイルちゃん、又はさっきぶつかってしまった少年の学生証である可能性が1番高い。 中を見てみると、青みがかった髪色の少年の写真が貼ってあった。 「『黒沼青葉』……。あの子の名前か」 高校生は学生証はあまり使わないのかもしれないが、来良大学の場合、学校に入るのには確かあの学生証がなければならない筈だ。 「明日早めに行って、来良学園の前で待ち伏せしてるしかないか……」 もしかすると、今日は厄日だったのかもしれない。 私は本日何度目かの溜息を吐いた。 ♂♀ 「……来ない」 翌日。 来良学園の前で黒沼君を待つこと1時間。 彼は未だに姿を現さない。 このままだと黒沼君、入学2日目で遅刻するんじゃないか。 来良大学の新入生の授業開始日はまだ数日先だから、私は今日は行かなくても支障はないけど…… 結局、始業のベルが鳴っても彼は現れなかった。 私が見逃しただけかもしれないけど、もしかしたら彼も学生証の事に気がついて、来良大学に来ているかもしれない。 私はそう結論付けると、足早に来良大学へと歩いて行った。 「あ、いた」 私が大学の前に着くと、黒沼君が辺りをキョロキョロと見回しながら門の前に立っていた。 「黒沼君」 私が走り寄ると、彼は私に気がついたようで、ホッとした表情になる。 「ごめん!学生証、だよね?」 「はい!昨日家に帰って驚きました!まさか学生証を取り違えてたなんて……」 「私も。だからさっきまで来良学園の前で黒沼君の事待ってたんだ」 「え、そうだったんですか!?ごめんなさい!」 「大丈夫大丈夫」 私はそう言ってニコリと笑うと、彼に学生証を差し出した。 「はいコレ。黒沼君の学生証」 「あ、俺も返します!珠音さんの学生証」 私は彼から、彼は私から学生証を受け取る。 「ありがとう黒沼君。じゃあ、私はこれで」 「あ、ちょっと待ってください!」 その場を去ろうとした私の腕を、黒沼君が咄嗟に掴んだ。 「ちょっと聞きたい事があるんですけど、珠音さんって来良のOGですよね?」 「え?う、うん。3年からの編入だけど」 「お願いがあります。俺に、池袋を案内して貰えませんか?」 「へ?いや、良いけど……何で私?」 「此処で出会ったのも何かの縁ですし、それに、珠音さんとは仲良くしておきたいなって思って!」 「……?そうなんだ」 仲良くしたい、か…… 何となく含みのある言い方だったけど、此処で警戒した態度をとると後々都合が悪くなる気がしたので、私は敢えて何も突っ込まない事にした。 「えっと、取り敢えず連絡先、聞いても良いですか?」 「うん。赤外線ある?」 「ありますよ」 互いのケータイを近付け、赤外線通信をする。 「ありがとうございました! あ、えっと、実は池袋案内に他の人も一緒に来るんですけど……それでも良いですか?」 「あー……いいよ」 「ありがとうございます!じゃあ、また連絡します!」 黒沼君は爽やかにそう告げると、軽やかに走り去って行ってしまった。 「黒沼青葉君、か」 一見爽やかな好青年に見えたけど、さっきの含みのある言い方がどうしても気になる。 彼も、見かけによらない人だったり、して。 ……いや、まさかね。 私は軽く頭を振ると、折角だからと大学構内へと入って行った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |