Confusion!!(修正前)
2.
入学式も終わり、私は欠伸を懸命に堪えながら駅に向かって歩き始めていた。
何で入学式とかって眠くなるんだろう。
高校に比べれば規模は物凄く大きくなってたけど……
そんな事を考えながら、曲がり角を曲がった時、
「うわっ!」
曲がり角の向こうから走って来た少年と勢いよくぶつかった。
私の荷物と少年の荷物があちこちに弾け飛ぶ。
……今日は人とぶつかってばかりで散々だ。
「すみません!急いでたので!」
声の主の方に顔を向けると、青っぽい髪の小柄な少年が、申し訳なさそうな顔で私を見つめていた。
この子が、さっき私とぶつかった人か。
「気にしなくて良いよ。私は大丈夫だから。
……その制服、もしかして来良?」
「あ、はい!今年から入学なんで、さっき入学式に出てきました!」
「へえ。私も来良大学の入学式に行って来たとこだよ」
「そうなんですか!」
私と彼は、そんな会話をしながら、自分達の荷物を拾って行く。
「じゃあ、僕はこれで!ホントにさっきはすみませんでした!」
「うん。こちらこそ」
「失礼します!」と言って、少年は足早にその場を立ち去って行く。
この時の私は、後々彼に再び会う事になろうとは知る由もなかった。
♂♀
「臨也さん」
私は帰宅するや否や、仕事用デスクで頬杖をついている雇い主の元へと歩を進めて行く。
「おかえり珠音。今日は随分と機嫌が良いねえ」
「はい。臨也さんの知り合いと偶々お話できたので」
「知り合い?」
「そうです。実は私、さっき臨也さんの妹さん達に会いました」
ガタリ
臨也さんが突然立ち上がった。
「?」
どうしたんだろう。
疑問に思っていると、臨也さんが私に質問を投げかけてくる。
「いつ、どこで会ったの、アイツらに」
「え……入学式の前に、駅の周りで会いましたけど……それが何か?」
「もうアイツらには関わらない方がいい」
「……は?」
何、何で?
言いたい事が顔に出ていたのか、臨也さんは私を見て小さく溜息を吐くと、理由を説明し始めた。
「苦手なんだ、アイツら」
「苦手!?臨也さん、苦手な人なんていたんですか?……その、静雄さん以外に」
「そりゃあねえ。俺はシズちゃん以外の全ての人類を愛してるし、勿論俺の妹達もその括りには含まれているけれど、俺だって人間だ。苦手な奴だっているよ」
「でも、妹さんなんですよね?」
「妹だからこそ、苦手なのさ。
考えてもみなよ、俺の妹やってる位なんだから、アイツらがマトモな訳がないだろう?」
「まあ確かに、ちょっと変わってはいましたけど……でも、別に悪い子達ではないじゃないですか」
「どうかな。人は見かけによらないってよく言うじゃないか。自分で言うのも何だけど、俺だって見かけとは全く違った中身を持つ人間だと自負しているよ?」
「自覚はしてたんですね」
「まあね。直すつもりも無いけどさ」
臨也さんはそう言って再び椅子に座り込む。
「とにかく、アイツらとはもう関わらない方がいい。碌な事にならないよ」
「……嫌です」
私はきっぱりとそう言った。
臨也さんはそんな私を見て、少しだけ眉を顰める。
「人は見かけによらない。それは確かに、私もそう思います。
だけど私は、人を偏見で判断したくもないんです。だから、クルリちゃんとマイルちゃんと、ちゃんと向き合ってから、私が自分で判断します。彼女達とこれから関わっていくのか否かを」
「……ふぅん。まあ、好きにすれば?でも、俺はちゃんと忠告したからね」
臨也さんはそれだけ言うと、パソコンに目を向けてしまった。
これ以上話すつもりはないって事か。
私は小さく溜息を吐くと、自分の部屋へと足を運んだ。
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