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Confusion!!(修正前)
1.
翌日。
私は何とか時間通りに起床し、来良の制服を身に纏う。
長い髪を束ね、いつもなら下ろしている髪を、今日はポニーテールにしてみた。
鏡の前に立ち、まじまじと自分の姿を見つめる。

今日で、高校生も終わりか……


「……よし!」


気合を入れてから、私はリビングへと向かった。


「ああ、もしかして今日卒業式?おめでとう」


朝食を取りながら、臨也さんがそう言った。


「……どーも」


私はそう返しながらコーヒーを啜る。


「俺は残念ながら君の晴れ姿を見に行けないけど、たった半年でも珠音がちゃんとした学生らしい暮らしを出来た事は、本当に良かったと思ってるよ」


臨也さんが、珍しくストレートに優しい言葉を掛けてくれた。


「そうですね。お陰様で楽しい高校生活でした」

「君も春からは大学生か。頑張ってね」


そう、私はこの春からは来良大学に通う事になる。
本当は大学なんか行かなくても良いと思ったのだけれど、臨也さんが割と成績の良かった私に進学を勧めてくれたのだ。


「じゃあ、そろそろ行きますね」

「ん、行ってらっしゃい」


外に出ると、今日も大粒の雨だった。

でも、私の気分は晴れている。

まだまだ私が抱えている悩みはあるけれどー取り敢えず、黄巾族とダラーズとのピリピリした緊張感はなくなり、街には平和が戻ってきた。

だから、今はとにかく、目先の幸せに目を向けていたいんだ。


♂♀


改札口を抜けて池袋駅に着き、そこから少し歩くと、いつも以上に人で溢れ返っている来良学園が見えてきた。
私は来良の校門の前に立つと、少しの間だけそこで足を止めて校舎を見上げた。

ほんのちょっとだけしか此処にはいられなかったけど。
私の中では、凄く充実した半年間だった。

お世話になりました。

心の中で小さく呟いてから、私は校舎の中へと足を進めた。


♂♀


正直に言うと、卒業式の中身自体は余り覚えていない。
卒業証書を受け取ると、そのまま眠ってしまっていた。
昨日あんな時間まで起きていたのだから、無理もないだろう。

目を覚ますと、既に式は終盤に差し掛かっていた。


「一同、礼」


頭がだんだん覚醒してきた頃には、教頭先生の言葉で卒業式が終わっていた。


教室に戻ってからLHRを済ませると、クラスの友達と卒業文集に寄せ書きをしたり、写真を撮り合ったりしてから校舎の外へと出た。
外は既に人で溢れ返っていて、卒業生の男子に第二ボタンを縋る後輩や、先輩との別れを惜しんで泣く後輩、友達同士で自撮りをする卒業生、子供の卒業を祝って涙を浮かべる保護者など、様々な形で卒業を祝っている。

ごった返す群衆の中、『彼ら』の姿を探していると、後ろから声を掛けられた。
声を掛けてきたのは、まさに今私が探していた人達で。
でもその中に、ナンパ好きの彼の姿はなかった。


「愛峰先輩、卒業おめでとうございます」


杏里ちゃんが柔らかく微笑んだ。


「本当に卒業しちゃうんですね。
ちょっと寂しいです」


帝人君は、照れながらも素直に話してくれた。


「2人ともありがとう。
高校は卒業するけど、2人には多分これからもいろんな意味でお世話になると思うから、その時は宜しくね」


私が微笑みながらそう言うと、彼らもニコリと笑って頷いた。


「それで、正臣の事なんですけど……」


帝人君が言葉を紡ぐ。


「やっぱり結構怪我が酷いみたいで、今は入院してます。先輩の卒業式出られなくて残念そうにしてました」

「……そっか」


そうだよね。あんなに大怪我したんだもん、直ぐには来られないよね。
ちょっと残念だけど、まあ仕方ない。

そう思った時、私のケータイの着信音が鳴った。
画面に表示された名前は『臨也さん』。


「……あ、ごめん2人とも。私、もう行かなきゃいけないっぽいや。本当にごめんね?」


私はそれだけ言ってから急いで彼らに別れを告げると、すぐに電話に出る。


「もしもし」

『ああ、珠音?今から君の卒業祝いに何かご馳走してあげるよ。何がいい?』

「え?いいですよ別に。私、ただの居候ですし」

『そんなの気にしなくていいよ。それに俺、』

「『もう来ちゃってるし』」


電話から、そして背後から、同じタイミングで同じような声が聞こえた。

後ろを振り返ると、そこにいたのは正真正銘、電話の主で。


「臨也さん……卒業式には来ないって言ってませんでしたっけ」

「あれ?嫌だった?君を驚かせようとしただけなんだけどなあ」

「嫌じゃないですよ。寧ろ嬉しかったです。それに、これでも結構驚いてます」

「そう。喜んで貰えたなら良かったよ」


それから、彼は私の手を取って歩き始める。


「どこに行くんですか」

「んー、内緒。
でも、君がとっても行きたがってた所」


臨也さんは狡い。
何でもかんでも「内緒」で済ませちゃうなんて……
でも、深くは問いただす事が出来ないのが私の性分だ。
臨也さんも、そんな私の性格をよく解った上でわざと内緒にしている。

私はまたもや問い詰める事を諦めると、臨也さんに続いて春の池袋の街へと飛び出していった。

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