[携帯モード] [URL送信]

Confusion!!(修正前)
4.
帰宅道、臨也さんはかなりご機嫌だった。


「いやあ、さっきはごめんね?君にあんな事しちゃってさ」

「……臨也さん、軽く本気だったんじゃないですか」

「何が?」

「軽く本気で撃とうとしてましたよね?私の事」


すると、臨也さんが立ち止まって数秒の間私を見つめた。
それから突然笑い出し、「まさか!」と言葉を発する。


「あのさ、勘違いしないでほしいんだけど、俺は人殺しじゃないんだよ?人間を愛して愛して病まないこの俺が人を殺す?天地がひっくり返ってもあり得ないよ、そんな事」

「……静雄さんの事は殺そうとした癖に」

「シズちゃんは人間じゃないからね。それに、相手がシズちゃんだろうがそうじゃなかろうが、どっちにしろ俺は自分の手は穢さないよ。俺はー俺だけは、蚊帳の外にいるべき存在なんだからさ」


私が「最低ですね」と言おうとして口を開いた時ー


「ヘイ」


ふと、背中から声をかけられた。

聞き覚えのある声に振り返るとー
そこには闇夜に溶け込むように鮮やかな黒肌の、2メートルを越す巨漢が立っていた。


「サイモン……?」


珍しく、臨也さんが完全に困惑している。

臨也さんが口を開きかけたその瞬間ー
傷だらけの巨大な拳が、臨也さんの顔面へとのめり込んだ。


「!?」


私が、数メートル程飛んで行った彼の元へと近付こうとするとー
サイモンさんに、ポンポンと肩を叩かれた。


「久シブリネー珠音。でも、珠音はココでチョット待ッテテ。イイ?」


私が困惑しながらも頷くと、サイモンさんは陽気な微笑みを私に残し、臨也さんの所まで歩いていった。

それから彼らは数分ほど会話をしていたようだが、何を話していたのかは解らなかった。


「……待たせたね。帰ろうか」


そう言って私の元へと歩み寄ってきた臨也さんの左目は真っ青に腫れていた。


「……」


私は、臨也さんの顔をじっと見つめる。

それからー


「……っふふ、あははっ!」


唐突に笑い出した。


「……何が可笑しいのさ」


不機嫌な顔で尋ねる臨也さん。


「だ、たって……臨也さん、さっきまであんなに鼻が高い感じだったのに……サイモンさんに一発かまされてざまあみろって言うか……いつも綺麗な顔で人の事嘲笑ってるのに今はその顔が台無しで……ふふっ」

「…君、時々もの凄く失礼な事言うよね。それに、普通だったら此処は俺を心配する状況でしょ」

「臨也さんですからいいんですっ」


そして、私と臨也さんは、先ほどとは真逆のテンションで新宿のマンションへと向かった。


♂♀



「ただいま帰りました〜」

「……ただいま」

「遅かったわね。で、例のものは……どうしたの?その顔」


左目を真っ青に腫らした臨也さんの顔を見て、波江さんが双眸を見開く。


「……ちょっと、いいパンチを食らってね。気絶はしなかったけど……なんか暫く立てなくなったとこを、ロシア語で散々説教されまくったよ。
まったく、なにが『説教するつもりはない』だよ……完璧に説教だったじゃんか」


そんな臨也さんを見て、私は再びクスクスと笑う。
軽く臨也さんに睨まれたけど、そんな顔で睨まれても迫力がない。


「なに?ロシア語ってどういう事……?あの静雄って奴と喧嘩した時でも、こんな青あざ作った事って無かったんじゃない?」

「力ならシズちゃんがもちろん上だけど……駄目だ、ありゃ、なんかの格闘技を相当やってる奴のパンチだ。反応はできたけど避けられなかった。……クハハ、こりゃ、ロシアンマフィアの一員だとか元傭兵だって噂もマジなのかもね」


臨也さんはそう言って自虐的に笑った。


「大丈夫?脳出血とかしてないでしょうね?」


あ、珍しく波江さんが臨也さんの心配をしてる。


「波江さん、こんな人の事なんて心配しなくてもいいんですよ」


そんな私達の声は、臨也さんには届いていないようだ。


「くそ……罪歌を出し抜いて、自分が特別な存在かもしれないなんていい気になった直後にこれだ」


『特別な存在』なんて……
まるで中2病末期患者みたいだ。

私は苦笑いをする。

臨也さんは鏡を見て瞳孔などをチェックし、とりあえず脳出血の症状などがない事を確認するとー嬉しそうに笑いながら、波江さんに向かって問いかける。


「なあ……ひとつ聞いていいか?」

「なによ」

「法螺田に帝人君と珠音の情報流したのって……君だろ?」


え?どういう事?

私は思わず波江さんの方を振り返る。


「どうかしらね。仮にそうだとしても、どうせ見越してたんでしょう?」


表情ひとつ変えずに答える波江さんに、臨也さんは苦笑する。


「そりゃ、帝人君の件は見越してたさ。君は彼を憎んでいるんだからね。
でも……解らないなあ。なんで珠音の情報まで流したのさ?君にはまったく関係ないじゃないか」

「貴方へのちょっとした嫌がらせよ」

「……俺って君にそんなに嫌われてたんだ」


臨也さんは溜息をつく。


「あの……情報を流したって、どういう事ですか」

「ん?ああ、さっき黄巾族に『法螺田』って奴がいただろう?
波江さんは、あいつに、ダラーズのボスが正臣君の親友の帝人君である事、そして、俺の家に居候してる奴ーつまり君だけどー君もダラーズの一員だって情報を流したのさ。
それで、それを知った法螺田は、正臣君に裏切り者のレッテルを貼り、彼が集団リンチに遭った、というわけだ」


じゃあ、紀田君があんな大怪我をした大元の原因は、波江さんにあるのか……

私はズカズカと波江さんの方に歩み寄る。

[*前へ][次へ#]

4/5ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!