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Confusion!!(修正前)
3.
それから臨也さんは、再び刃を構えた杏里ちゃんに対して挑発の言葉を投げかける。


「さて……君はどうなんだい?本当に平穏で幸せな毎日を手に入れたいなら、その刀で君の知り合いを全て切ってしまえばいいじゃないか。君が女王となって、それこそ平和な世界でも手に入れられるだろうに」

「そんなのは……そんなのは違います……!私は……誰かを愛する事はできないですけど……それでも、それは間違ってると……思います」

「おやおや、それなら、帝人君と正臣君、どちらからも好意を寄せられながら……未だ答えをハッキリさせない君の態度は、果たして正解と言えるのかい?」

「……」


黙り込む杏里ちゃん。
何か言ってあげたいけど、私にも人の愛し方が解らないから、私はつべこべ言える立場にいない。

臨也さんは尚も挑発の言葉を投げつける。


「まったく愉快な自己満足だね。君は自分が人を愛せないと思いこんで、それを理由に今の立場に満足しているだけじゃないか。
罪歌が君の代わりに人間を愛してくれる?馬鹿馬鹿しい。その刀の呪いが人間の『愛』と同じだなんて、一体どうやって証明できる?」

「黙って……下さい……」


言い終えるよりも早く、杏里ちゃんの身体は跳んでいた。

さっきよりも鋭い軌道でくり出された一撃だったけれど、臨也さんはそれを、懐から出したナイフで力強く打ち払う。
同時に、杏里ちゃんの死角をつく形で移動し、彼女の背後に回り込む。
それを読んでいた少女は、返す刀で背後を薙ぎ払うけれどー
臨也さんは杏里ちゃんに攻撃を加えようとはしておらず、さっきよりも距離をとって彼女に話しかけた。


「あの、さ。あんまり軽く見てもらっちゃ困るね。俺だって、伊達にシズちゃんと喧嘩して張り合えるわけじゃないんだよ。
それと……まあ、せめて、これを俺に渡すべきじゃなかったね」


ニヤニヤと笑いながら、臨也さんはさっき比嘉さんから受け取った拳銃を杏里ちゃんに向ける。


「ーッ!」


私は声にならない悲鳴を上げるけれど、杏里ちゃんはまったく動じない。

ーああ、きっと杏里ちゃんは銃弾を抜き取ったんだな。

ホッとしたのも束の間、臨也さんはもう片方の手に持っている小さな透明の袋を杏里ちゃんに見せた。


「……ッ!」


透明な袋の中には、いくつもの銃弾らしきものが詰まっている。


「さて……今のやりとりの間に……俺は、この弾丸を銃に籠める事ができたでしょうか……?」


挑発的に尋ねる臨也さん。
杏里ちゃんは、それでも冷静な視線と構えを崩さない。

大丈夫、なのかな。

私はまさに、手に汗を握っている状態だ。

そんな状況の中、臨也さんは静かに言葉を紡ぐ。


「ああ、言っておくけど、君は狙わないよ」

「……?」

「比嘉君を狙うから」

「……!」

「ああ、それともその辺を歩いてるカップルがいいかな。いや……やっぱり、」


突如、臨也さんが私に近寄り、腕を強く引っ張った。

「!」


反動で、私は臨也さんの腕の中に収まってしまう。

カチリ、と私の頭のすぐ横で音がした。


「「!?」」


私と杏里ちゃんの間に動揺が走る。


「珠音にしようかな♪」


ゾクリ、と背筋が凍る。

人に銃を向けられるって、こんなにも恐ろしい事なんだ……。
だって、この状況で私の生死を握っているのは臨也さんなんだから。
あんなに自殺を望んでいた私がー
今では、死ぬのは怖く感じてきている。

私の思いとは裏腹に、臨也さんは杏里ちゃんに対し、淡々と話を進めていた。


「珠音を巻き込んだとしてもー君は人を愛せないんだから、大して心は痛まないかな……?」


凍りつく杏里ちゃんと私。
臨也さんはお構いなしに続ける。


「ひとつ言っておくけど……比嘉君が切り裂き魔事件の被害者だなんて事はとっくに知ってたよ。シズちゃんに喧嘩売って、ボロボロになって逃げてた所を斬られたってんだからさ。
だけど、なんでそんな比嘉君に、今回の拳銃回収を命じたと思う?」


それから呟かれた言葉はー


「君だよ。君と、こうして話して……宣戦布告したかったからさ」


杏里ちゃんではなく、その手の内にある刃へと向けられていた。


「僕も、人間を凄く愛しているんだ」


小さく微笑みながら、臨也さんはさっきの言葉を繰り返す。


「刀如きに、人間を渡してたまるか」


それは、まさに罪歌に対する、宣戦布告の言葉であった。


「人間はー俺のものなんだから、さ」


最後にニヤリと笑いながら、臨也さんはひとつ付け足した。
恫喝とも取れる今までの言葉が、全て冗談かと思えるような言葉を。


「ああ、でも君がご執心のシズちゃんだけは、俺はいらないからくれてやるよ。なるべく早くなます斬りにする事を祈ってるから、頑張ってね。……それじゃ」


爽やかな笑顔と共に言いながら、臨也さんは私の腕を引っ張って公園を出た。

最後に私が見たのはー瞳を真っ赤に染めてじっと臨也さんを睨みつけている杏里ちゃんの姿だった。

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