Confusion!!(修正前) 1. あれから。 帝人君と杏里ちゃんは、意識を失った紀田君に付き添って病院へ行った。 門田さんも、遊馬崎さんや狩沢さんの元へと帰って行った。 セルティさんはいつの間にかいなくなっている。 恐らく、法螺田さん達を追って行ってしまったのだろう。 そして私はー帰るべき場所へと戻る事に決めた。 ♂♀ 「やあ、おかえり」 いつもと変わらない笑顔で出迎えてくれた彼。 昨日の出来事などなかったかのように振舞っている。 「……どうも」 私だってそこまで子供じゃない。臨也さんが無かった事にしてくれてるんだ、私も無かった事にして動こう。 そう思って、彼の横を通り過ぎようとした時ー 「昨日の件だけど……」 「!」 「流石にやり過ぎた。ごめんね」 「!?」 私は思わず振り返る。 だって……臨也さんが、あの折原臨也が、人に真面目に謝ったから。 「……別に、もう気にしてませんから」 私はそれだけ言うと、自分の部屋へと向かった。 臨也さんには恥ずかしくて見せられなかったけどーこの時、私は柄にもなくニヤニヤしていたに違いない。 ♂♀ 「珠音、起きてる?」 数時間後。 もう深夜だと言うのに、臨也さんが私の部屋に入ってきた。 ……って、 「な、何勝手に部屋に入って来てるんですかッ」 「鍵を閉めなかった君が悪いんじゃないの?」 「いや、それもそうですけど……私がもし着替えてたりしたらどうしてたんですか!?」 「ああ、その点は安心して良いよ。君の貧相な身体つきになんて俺は欲情しないから」 「なっ……!」 なんて失礼な人なんだ。 私はもうこの話を続ける気にもならず、「それより、こんな時間に何の用ですか」と話を逸らした。 「ちょっと出掛けようと思って。 君も来るよね?」 『来るよね』って事は、行きたくなくても強制連行されるのだろう。 「……行けばいいんでしょう、行けば」 「理解の早い子は好きだよ」 「それはどうも。……直ぐに着替えますから、ちょっと待ってて下さい。流石にパジャマでは出たくないんで」 臨也さんの言葉を軽く受け流し、私はクローゼットからワンピースを取り出す。 臨也さんが肩を竦めてから部屋を去ると、私は素早くそれに着替えた。 「それで、何処に行くんですか」 目的地までの道のりの中で、歩きながらそう尋ねたけれど、臨也さんは「秘密」の一点張りで、何も教えてくれなかった。 ♂♀ 数分後 新宿中央公園 富士見台六角堂 「此処……ですか?」 「うん」 何でこんな時間に公園に? 私は首を傾げる。 「まあまあ。君はそこで大人しく見てて」 臨也さんが私の頭をポンポンと叩いた。 「は、はあ……」 その時、小柄な男性が臨也さんの元へと近づいて来た。 誰……? その人は、臨也さんに口のキツク縛られたナップザックを渡した。 臨也さんは、手際よく紐をほどき、中身を確認すると同時に男性に向かって笑顔を見せる。 「うん、間違いない。確かに受け取ったよ。や、これでやっと粟楠会から報酬が貰える」 ……粟楠会? 私にはその粟楠会が何をしているかは分からないけれど、この前の臨也さんと波江さんの会話から判断するに、何と無く危ない組織だと言うことは解る。 ひょっとして、今この人が臨也さんに渡したのって、『チョコレート』なのかな…… 「うす……弾丸までは……回収できませんでしたけど……」 「ああ、いいのいいの。銃身の旋条だけ回収できりゃ、弾丸は別に警察に回収されても問題ないから。 しかしご苦労さんだねえ、比嘉君。手早い仕事、感謝するよ」 「うす……」 予想が当たった。 やっぱり『チョコレート』だったんだ…… 一方比嘉さんは、臨也さんに対して恭しく頭を下げている。 [次へ#] [戻る] |