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Confusion!!(修正前)
4.
「かッ……かッ……門田ぁッ!てめッ……てめぇぇッ!」

「やっぱり手前だったか。泉井とかがパクられた時、手前だけは上手く逃げ延びた上に不起訴になったって聞いちゃいたが……まさか、こんな大がかりな真似ぇするようになるたあな。
つーか、この程度の変装で紛れられるんだから、なまじ人数を増やすのも考えもんだよなあ?」


門田さんはニヤリと笑いながら呟くと、続いて紀田君の方に向き直る。


「さっきはヒヤリとしたぜ。うたれるんじゃねえかと思ってよ……
よく解らんが、切り裂き魔のお陰で助かったな。
悪いな……俺らも、あの銃をなんとかしねえと動けなかったんでな」


紀田君、私達がいない間に、そんなに大変な目に……

ごめん、沙樹ちゃん、と私は心の中で謝る。

結局、最後まで約束守れなかったや……

紀田君はというと、状況が飲み込めず、バールを杖代わりにして立ち上がりながら門田さんに向かって尋ねかけた。


「門田……さん?これ、いったい……」

「いや、お前が言ってた法螺田って名前がずっと気に掛かっててな……ちょっと探りぃ入れたらこの有様だったからよ……ちょっくら、ダラーズの仲間を30人ほど集めて、適当に黄色い布ぉ着けて潜り込んだ。遊馬崎と狩沢は目立つから置いてきたけどな」


法螺田、と言うのは、先程門田さんと話をしていた人の事だろう。


「畜生……どうなって……どうなってんだよ!ちゃ、チャカは、チャカは何処いったぁ!」


もはや完全に敗色が濃くなった状態でー法螺田という人は尚も生き残る事を考え、銃を探し始めた。
しかし、床にそれらしき黒い塊は見あたらずー


「おい」


代わりに、真後ろからひとつの声がなげ掛けられた。


「あんた……あの時……泉井って奴と一緒にいたのか?」


2年前の話を持ち出す紀田君。

その一言で法螺田さんの動きと呼吸は完全に停止するが、冷や汗だけが変わらず流れ続けている。


「い、いや、俺は……」


歯をカチカチと震わせる法螺田さん。


「沙樹を泣かせたのは……お前か……?」

「……っくしょぉぉぉぉあぁッ!」


懐から小さなナイフを取りだし、振り返り様に思い切り突き出したけれどー
カウンターをとる形で、黄色い布の巻かれた紀田君の拳が法螺田さんの顔面にめりこんだ。


「本当は……バールで脳天叩き割る筈だったんだぜ?」


地面に転がってもだえる法螺田さんを見ながら、紀田君は静かに呟いた。


「帝人と杏里と珠音さんは……こっち側の人間じゃないだろ」


紀田君は静かに呟きながらも、あくまで顔を見せようとはしない。


「だから……死体なんざ見る必要はねぇ。そう思っただけさ」


法螺田さんが、後輩らしき男達に引きずられるように逃げていく。


「まちやが……」


追いかけようとして一歩踏み出した瞬間ー

緊張の途切れた紀田君の身体に限界が訪れ、そのまま地面へと崩れ落ちた。


♂♀


「正臣!正臣!しっかりしてよ、正臣……ッ!」

「紀田君!」


帝人君と杏里ちゃんが、涙目を浮かべて紀田君の元へと駆け寄る。
私はそれを遠くから眺めていた。
彼らの友情に、私が付け入る隙はない。そう思ったからだ。


「病院に運ぶならーひとつだけ、頼まれちゃくれねえかなあ」


全身傷だらけになった状態で呟く紀田君の言葉に、帝人君と杏里ちゃんは、紀田君が生きていたと我が事のように喜んでいる。


「俺を運ぶなら、来良総合病院にしてくれ」


それから、彼はちらりと私に目を移す。


「待ってる女が居るんだー頼むよ」


紀田君の横で様子を見ていた門田さんが、


「ったく、逃げるなたぁ言ったが……逃げなさすぎだ。ちょっとは加減しろよ」


と呆れたように呟く。

でも、その目には、紀田君に対する敬意のような感情が浮かんでいて。


「安心しろよ。直ぐに来良総合病院に運んでやるよ」


力強い門田さんの言葉を聞きながらー紀田君は、静かに意識を失った。

因みに、法螺田さん達がその後どうなったのかは……私達には知る由もない。

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