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Confusion!!(修正前)
3.
……え?

私は静雄さんの言葉に固まった。

嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。

紀田君が、静雄さんの恐ろしさを誰よりも理解している筈の紀田君が、そんな事をするわけが無い。

ー助けにいかなきゃ。

このままでは、紀田君は静雄さんに殺されてしまうかもしれない。
静雄さんを説得するよりも、紀田君を逃した方がいいだろう。

私がそう思い立ち、行動に移そうとした時ー。
『彼女』もまた、行動を起こし始めた。

引き止める岸谷さんを振り切り、私は、ただひたすら、ケータイを見つめながら走る杏里ちゃんを追う。


「あ……んり、ちゃん!ちょっ、待って……!」

「愛峰先輩っ……ハァッ、来ちゃ駄目ですっ……!」


息を切らしながらも会話をする私達。


「杏里、ちゃん……私、貴方の事っ……知ってるよ!『罪歌』、だって事……ハァッ、知ってるよっ!」


そう言った瞬間、杏里ちゃんは立ち止まった。


「えっ……?そ、んな……どう、して……?」

「……ごめん、今はまだ言えない。でも、私も半分『こっち側』の人間、だから」


私がそう言うと、彼女は目を見開いた。


「詳しい事はまた今度話す。だから今は走ろう?紀田君を助けなきゃ!」


罪歌の母は真剣な眼差しでコクリと頷いた。


♂♀


走る。
走って、走って、走ってー。
ただひたすらに走り続ける。

暫くすると、ある廃工場に辿り着いた。


「先輩っ、ちょっと離れて下さいっ!」


私が離れた途端、杏里ちゃんが手から日本刀を取り出して入口にかけられた錠前を綺麗に吹き飛ばした。

激しい衝撃音が響き渡る。

包丁で切られた野菜のように、二つに分かれた鍵が地面に落ちると同時にー工場の扉が勢いよく開かれた。


「「紀田君!」」


私と杏里ちゃんの声がこだまする。

そして、私達は袋叩きに遭っている紀田君の元へと駆け寄った。


「え……?」


彼は困惑の表情を隠せない。

私達が紀田君の前に立つのとほぼ同時に、工場の敷地内に激しい嘶きが響き渡る。


「セルティさん!」


私が叫んだ直後、


「正……臣……?」

「みか……ど……?」


『ダラーズ』の創始者と、黄巾族の将軍が顔を合わせた。


「正臣!!園原さん!?それに愛峰先輩も!」


帝人君が工場内の状況を確認し、驚愕の表情で再び名前を叫び上げていた。
そして彼はそのまま血だらけの紀田君の元へと駆け寄る。


「確かに……これは最悪の光景だよ……」


紀田君の姿を見て、帝人君が叫んだ。

黄巾族?
ダラーズ?
切り裂き魔?
ううん、今はそんな事どうだっていい。
今は、この子達の安全を、絆を、守ってあげなきゃ。

それが私に出来る唯一の事だ。


混乱していたのは彼ら三人だけではなく、黄巾族の残りのメンバーとて同じ事だったようだ。


「出やがったな黒バイク……くそッ……なんだかよく解らねえが、お前ら、こいつら全員砂にしちまえ!その手ぶらの女を人質にでもしろ!」

「!」


『手ぶらの女』。
私のことだ。

身体が強張ったその時ー
集団の中から、ひとつの声が湧き上がる。


「今だ……裏切れ!」

「……あ?」


え……?

周囲を見回すとー
そこには、信じがたい光景が広がっていた。

黄巾族のメンバーが、互いに殴り合っている状況。
私たちに向かった者が、横から現れた別のメンバーに殴り倒され、そのメンバーに向かった者は、また別のメンバーに飛び蹴りを入れられる。
その中に、恐ろしい勢いで黄巾族のメンバーを叩いていく人間の姿があった。
彼がスカーフを脱ぎ捨てると、その下から現れたのはー


「よう」


門田京平さんだった。

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