Confusion!!(修正前) 5. 「臨也さん」 私がびしょ濡れのまま室内に入ると、臨也さんはデスクの前に手をついて立ちながら、外の景色を眺めている所だった。 「随分遅かったねえ。紀田君とデートでもして来たの?」 「は?」 「お互いの過去について暴露したみたいだね。それから、互いに今置かれている境遇を嘆き合っていた訳だ」 「な……!ちょっと待ってください!何で、何で臨也さんが、そんな事知ってるんですか!?」 「本当、笑っちゃうよねえ。君達の話聞いてるとさ、可笑しくて可笑しくてたまんなかったよ。アハハッ」 私の質問を無視し、臨也さんは楽しそうに嗤う。 それにしても、『話を聞いてた』ってどういう事? 私の問いに答えるかのように、臨也さんは言葉を紡ぐ。 「もしかして気付いてなかったの?君の身体に盗聴器をつけておいたんだけど」 「っ!?」 盗聴器!? 私が背中の辺りを確認していると、臨也さんが一歩私に近付いて来た。 「珠音さぁ」 耳元で囁かれ、私の身体は硬直する。 「君が予想外な行動でいつも俺を驚かせて愉しませてくれるのは嬉しいんだけどね?でも最近の珠音は……ちょっと生意気過ぎて面白くないんだよなあ」 それから臨也さんは、突然自らの片手で私の両手首を掴んで私をデスクの上に寝かせた。 「い、やっ……!」 たった一瞬の出来事で、頭が真っ白になる。 起き上がろうとした所で、臨也さんが私の上に覆い被さってきた。 やだ、怖い。 何をするの、何をされるの。 「だから、今から俺が君にする事は、俺から君への嫌がらせだ」 そう囁く彼の瞳には、暗い光が宿っていて。 「はな、してくださっ……んっ!?」 言い終わらない内に、臨也さんが私の唇に噛み付くように接吻してきた。 キスされてる。 そう気が付いたのは臨也さんの唇が触れてから数秒後の事だった。 「んぅ……んんっ!」 抵抗して顔を動かそうとしたら、それに気がついた臨也さんは私の顎をもう一方の手で固定してしまう。 やだ、何で。 何で、こんな事。 真っ白に染まった頭の中では、何も考える事ができなくて、そんな疑問だけがぐるぐると脳内を渦巻いていた。 少ししてから、臨也さんは私から離れていった。 流石に舌は入れられてないけど、ファーストキスを臨也さんに奪われたのはショックだった。 初めてのキス位、好きな人としたかったのに。 パシンッ。 疑問は怒りと悲しみに移り変わり、私は彼に平手打ちをかましていた。 「っ……馬鹿!ふざけるのもいい加減にしてよ!」 それから、私は走って外に出た。 泣いていたのに気付かれたくなくて下を向いてたけど、多分臨也さんは解ってたんじゃないかな。 ♂♀ 私はただ、行く当てもなく街を彷徨っていた。 気持ちがぐちゃぐちゃで整理がつかない。 紀田君の事、黄巾族の事、ダラーズの事。 そして、臨也さんの事。 「もう……どうすればいいのか解んないよ……」 小さく呟いた瞬間にケータイが鳴り、私は驚きの余り飛び上がる。 ロックを解除すると、新着メールが1件来ていた。 ー臨也さんじゃないよね……? 不安を抱えながら受信BOXを開いて確認してみると、 「静雄……さん?」 どうしたんだろう……。 慌ててメールの内容を確認すると、こう書かれていた。 『静雄のケータイからの連絡で悪い。コレを打ってるのは静雄の上司の田中トムなんだけど…覚えてるかな? そんな事より、静雄が今銃で打たれた。岸谷とかいう医者の所に向かったみたいだ。一応珠音ちゃんには伝えた方が良いかと思ってメールした』 え? 撃たれた? 静雄さんが? 私は現実をまともに受け入れられないまま、ただひたすらに池袋へと足を早めた。 [*前へ] [戻る] |