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Confusion!!(修正前)
4.
それにしても、と私は思う。
切り裂き魔と首無ライダーって……杏里ちゃんとセルティさんだよね?
何で黄巾族の集会なんかにいたんだろう?
もしかして杏里ちゃんは、紀田君の正体に気付いちゃったのかな?


「……珠音さん?」


黙って考え込んでいた私に、目の前の少年は怪訝な顔つきで呼びかけた。

「あ……ごめんね。ちょっと考え事しててさ……。
それで……ダラーズのボスが解った今、紀田君はどうするの?」

「……俺は正直、まだ何をすりゃいいのかわかんないです。何で……何で帝人が……。帝人の名前が此処で出てくるなんて……。でも、俺は帝人を疑ってはいません。帝人はそんな奴じゃないって思ってるから。今言えるのはそれだけです」

「そっか」


私はそう言ってから、紀田君に微笑みかける。


「安心したよ。やっぱり紀田君はちゃんと紀田君だね。それが例えどんなに表の顔であろうと裏の顔であろうと。私は、そんな紀田君の事を、1人の人間として尊敬してるし、たとえ沙樹ちゃんとの約束が無かったとしても、紀田君を守ってあげたいって思ったと思う。
紀田君は、もっと周りを頼っても良いと思うよ?1人で何でもできちゃうのは勿論凄い事だけど、でも、紀田君の周りには、良い人達が沢山いるんだから。紀田君が魅力的で素敵な人だからこそ、紀田君の周りには、そういった人達が集まってるんだから」

「はい。ありがとうございます、珠音さん」


礼を告げた紀田君の顔は、話す前よりは幾らかスッキリしていて、いつもみたいな会心の笑顔、という訳ではなかったものの、最後に少しだけ笑みを浮かべていた。

少しは、彼の力になれた……かな。


♂♀

「珠音さん、臨也さんの所に行くんですか?」


カフェから出ると、紀田君は不安げな顔で尋ねて来た。
私が黙って頷くと、紀田君は悔しそうな、憎らしそうな顔をした。
そして、下を向いて拳を強く握り締めながらこう叫ぶ。


「……なんで……なんでよりによって臨也さんなんだよ……!なんで…あんな奴の所に珠音さんが……畜生……畜生……!」

「紀田君……顔、上げて?」


私がそう言うと、彼は私の方を見つめた。


「いいんだよ、もう。私の命を助けてくれたのは臨也さんだった訳だし……仕方ないよ。
でも、私は臨也さんの取り巻きの子達とは違ってあの人の事尊敬なんかしてない。寧ろ紀田君にあんなに辛い思いさせたんだから大っ嫌いだよ」

「! じゃあ……なんで……?」

「……臨也さんは私を人間らしくしてくれた人で、少なからず感謝してるんだ。だから、たとえ自分があの人に利用されたとしても……仕方ないなって覚悟はしてるつもりだよ」


そして私は自嘲気味に笑った。
何故だろう、私の顔を見た紀田君の顔が、一瞬泣きそうな表情に見えた気がした。


「じゃあ、私そろそろ行く……」

「っ、珠音さん!」


紀田君は別れようとする私の手を掴んだ。

そしてー


「……行かないで……下さいよ……」


私と紀田君の間に、再び沈黙が訪れる。
聞こえるのは、街の雑踏と、雨のザアザアという音だけだった。

暫くして、私はやんわりと紀田君の手を離す。


「……ごめんね」

「珠音さん…」

「どうしても行かなきゃいけないの。紀田君だって、沙樹ちゃんがいるんだから私なんかに構ってちゃダメだよ。沙樹ちゃんの事幸せにしてあげられるのは紀田君しかいないんだから。沙樹ちゃんを裏切ったりしないで?ね?」

「で、でも!」

「私は大丈夫だから」


そして、今度こそ、私は彼に背を向けて歩き出した。

紀田君と沙樹ちゃんの運命を変えてしまったあの男、折原臨也に話をつけにいく為に。

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あきゅろす。
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