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Confusion!!(修正前)
3.
その後、どういう経緯で臨也さんと関わったのか、俺の記憶の中では曖昧だ。
俺は自分達の組織を勝たせる為に、臨也という男の持つ情報を利用する。
漫画で見るような、一対一などの健全な喧嘩とは程遠い、暗い抗争に身を投じて行った。

臨也さんのもたらす情報は、黄巾族を劇的に変えた。
それまで劣勢だった街の状況は少しずつ黄色に塗り替えられていく。

「勝てる」

気が付けば、俺は勝利を確信しながら笑っていた。

沙樹が、ブルースクエアの車に拉致されたという話を聞くまでは。


♂♀


「……それからは、珠音さんの知ってる通りっすよ」


そして紀田君は自虐的に笑った。


「……じゃあ、臨也さんは、黄巾族とブルースクウェアの抗争で黄巾族に味方しているように見せかけておいて、沙樹ちゃんが攫われた後は、黄巾族を見放した……って事?」

「見放したってより……初めからそのつもりだったんでしょうね。
俺の事も、沙樹の事も、ブルースクエアの事も……手駒にしたかったんだろうなぁ。
俺は……沙樹がピンチだった時に……足が竦んで動けなくて……それで……臨也さんに電話し続けて……」


そう話す紀田君の声は震えていた。


「それで……結局俺は、あの時沙樹を助けに行けなかった。沙樹を病院まで運んでくれたのは、当時ブルースクウェアに入ってた門田さん達だったんです」

「え?ワゴン組のみんな、ブルースクウェアだったの?」


私の問いに、紀田君は頷いた。


「でも、門田さん達は元々黄巾族との争いには乗り気ではなかったみたいで……ブルースクウェアの泉井って人が沙樹を拉致ったって解った瞬間に、奴らを裏切って沙樹を救って来良総合病院まで運んでくれたみたいです。
……俺が、何もできずに立ち尽くしてた、その時に」

「そう、だったんだ……」


それから暫く、私と紀田君の間に気まずい沈黙が流れた。

私の過去に紀田君が驚いているように、私も紀田君が経験した過去に驚いている。

そして……臨也さん。

あの人は何を考えているんだろう?

2年前に臨也さんが紀田君にした事は、幾らなんでも余りにも酷いと思った。

だから、私は決めた。
取り敢えず、まず始めに臨也さんと話をする事を。

私が首を突っ込むべきでない事は解っている。
解っているけど、首を突っ込まずにはいられなかった。
余計なお世話かと思われるかもしれないけど、ここで引き下がったら、私が私じゃなくなるような気がしたのだ。


「紀田君」


決意を決めた私は、俯く紀田君に向かって呼びかけると、彼は顔を上げて私の瞳を見つめた。
その眼は、どこまでも真っ直ぐで、綺麗で、儚くて。
ああ、彼の力になってあげたいな、と改めて認識させられる。


「私みたいに、過去から逃げちゃダメだよ。
向き合わなきゃダメだよ。
確かに紀田君は、1度は過去から眼を逸らし、逃げてしまったかもしれない。でも……紀田君は…紀田君は私と違ってやり直しが出来るんだよ?それに……沙樹ちゃんも、紀田君の事、待ってるし」


私が話している間、彼の瞳が私から逸れる事は無かった。
私は紀田君の眼が好きだ。
紀田君の眼は嘘をつかないから。
キラキラ輝いてる眼も、今みたいに真剣な瞳も、紀田君は魅力的なんだ。


「……珠音さん、俺だって本当は、組織同士の抗争なんて嫌いです。だから俺は黄巾族から逃げた。もう戻りたくはなかった。でも、俺の大事な人が……杏里が、切り裂き魔に襲われた。俺には、それが許せない……。俺は、切り裂き魔の正体が知りたい、それだけなんです」


え?
なんで切り裂き魔の正体を知るのに、紀田君はダラーズのボスの名前を臨也さんに聞きに行ったんだろう?

私の疑問に答えるかのように、紀田君が言葉を紡いだ。


「……昨日、俺はーいや、俺達は黄巾族の集会の時に見たんです。
切り裂き魔が、首無ライダーのバイクの後部席に乗ってる所を。
首無ライダーはダラーズの一員。
だとしたら、切り裂き魔もダラーズなんじゃないかって思って……
だから、本当は門田さん達にダラーズのボスについて聞きに行ったんですけど、臨也さんじゃないと解らないって言うから……」


紀田君は『臨也さん』と言う度に顔を顰めた。

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