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Confusion!!(修正前)
2.
「俺は……まあ、そうだね。沙樹ちゃんの後見人みたいなもんだよ。ああ、彼氏とかそういうんじゃないから、安心していいよ。美人局なんて今時流行らないしねえ」


聞いてもいないのに、その男は自分の事を淡々と語り続けた。

それ以来、沙樹が俺の元に来るときにはー折原臨也は、最初の頃はそれこそ背後霊のように現れた。

俺は最初に沙樹とあった日の夜、「じゃあ、あの臨也って奴が死ねって言ったら死ぬの?」と聞いてみた。
すると、彼女は数秒迷った後に、か細い声で「たぶん、ね」と答えた。
ああ、この子は可哀想な子なんだな、と思った。
あの臨也という男の呪縛から解き放ってやろうと思った。
ただひとつの欠点ー折原臨也への態度さえ直せば、なんの問題も無く彼女と付き合う事ができるのだ。


出会ってから1ヶ月ほど経った頃、珍しく沙樹と二人きりになった俺は、何気ない調子で聞いてみた。


「俺達ってさ、付き合ってるって言えんのかな?」

「どうだろうね?」

「お前はさ、なんで俺なんかと一緒にいんのよ」

「んー?好きだからだよ?」


あまりにもあっさりと答える沙樹に、俺は片眉をひそめながら言葉を返す。

「あの臨也って奴が、俺を好きになれとでも言ったのかよ」

「んー、最初だけね。臨也さんは人の恋愛にはあんまり口出さないもん」

「じゃあ、なんで今でも俺の事好きなんだよ」

「かっこいいから。んー、いや、可愛いからかな」


どこまでが冗談か解らない言葉に続いて、今度は沙樹の方が俺に尋ねかけた。


「正臣は?私の事好き?」

「あの臨也って奴への狂信的な態度を止めたら、好きになってやってもいいかな」

「しょうがないよ。欠点のひとつぐらい目をつぶってくれると嬉しいな」

「……自分で、欠点だって解ってんのかよ」

「まあね。直すつもりもないけど」


ーなんだ、この女。

ますます彼女の事が解らなくなり、どう答えて良いのか解らなくなった。
でも、俺の口からは自然と彼女にひとつの言葉を投げかけていた。


「欠点なら、直せよ。
俺も……手伝ってやるからさ」


そして、俺と沙樹は付き合い始めた。
俺のナンパ癖は一切無くなった。
でも、それを咎める者はいなかったし、実際、黄巾族は色恋沙汰を取り立てている状況ではなくなりつつあった。

ブルースクウェア。
黄巾族と同じく、池袋周囲を縄張りとしたカラーギャングだ。

最初は、黄色い布を巻いた集団を見かけたブルースクエアの面子が、縄張りがどうこう言い出して喧嘩を売ってきたのが始まりだ。

売られた喧嘩を買った。

いつも通りの事。
俺はそう考えていたが、その時は、いつもと違っていた。

相手の数とーその性質が、今まで喧嘩してきた相手とはまるで異質なものだったのだ。

百人を越える仲間達が次々に狩られた。
だが、黄色い布を外して黄巾族を解散させる事もできなかった。
仲間達の意見は『やられっぱなしは嫌だ』という者が大半だったし、それ以上に俺自身が恐かったんだ。
黄巾族を解散し、今までの居場所を失ってしまうことが恐ろしかった。
同時に、黄巾族である自分が得たものまで失ってしまうような気がして。

その筆頭である少女に目を向けるとー
彼女は、いつも通りの笑顔を浮かべたまま、俺を安心させるように呟いた。


「臨也さんに、相談すればいいよ」



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