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Confusion!!(修正前)
1.
「じゃあ……私から話すね」


カフェに着き注文を終えると、私は震えながらも全てを話した。

虐待を受けていた事。
親を刺してしまった事。
学校で酷い苛めを受けた事。
それが辛くて、自殺志願者のサイトに書き込みをした事。
そのオフ会で、臨也さんに目を付けられた事。

全部全部、話した。

紀田君は、想像を絶する私の過去に衝撃を受けていたようだった。


「だからね……私は人殺しなの。
私の事、軽蔑してもいいよ。嫌いになってもいいし、幾ら私に暴言を吐いてもいい。私は……それだけの罪を犯してしまったんだから」

「いや、そんな……」


そして紀田君は俯いた。


「じゃあ次は…紀田君の番だよ」


彼はコクリと頷くと、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。


♂♀


沙樹との出会いは、2年前、唐突に訪れた。


「その黄色い布。素敵だね」


俺ー紀田正臣の前に現れた少女達は、何気ない口調でそう言った。


「貴方達、黄巾族って言うんですよね」


少女達の一人がズバズバそう言い切り、俺の心は微妙に冷める。
彼女達は俺じゃなくて黄巾族に興味があるだけなのかと思ったからだ。

そして、改めて紀田正臣という個人をアピールするべく口を開いた時ー
俺の言葉を遮るように、少女の一人が柔らかく微笑みながら俺に話しかけた。


「噂に聞いてたよりずっとかっこいいね、紀田正臣君」

「あれっ?」


俺は思わず間の抜けた声をあげた。
どうして俺の名前を知っているのだろうか?

俺に声をかけてきたのは、グループの中央にいる少女だ。
ボーイッシュな髪の一部を脱色している、一際笑顔の明るい少女。
自分と似た雰囲気の外見をした彼女に、俺は軽く目を瞬かせながら口を開いた。


「なに?なんで俺の名前知ってんの?エスパー?寧ろエスパー伊藤?そんな人の心読むような真似してっと、バッグに詰めてお持ち帰りしちゃうよー?」


名前の件を疑問に思いながらも、口からは俺特有の軽口を流し出す。
少女達は俺の言葉にクスクスと笑い、その中で中央の少女が楽しそうに言葉を返した。


「やだもう。変な事言い過ぎ!紀田君、すっごく面白いんですけど」


ひとしきり笑った後、少女は柔らかい表情のまま首を振った。


「でもね、エスパーは私じゃないよ。エスパーはちゃんと他にいるの」

「へぇ。誰よ。誰か霊感少女がここにいんの?」


俺は彼女達を見渡しながら、同じように柔らかい表情で微笑んだ。


「で、なに?ご先祖様の霊が、俺が如何にイカス男か教えてくれたってわけ?それとも背後霊?自縛霊でも浮遊霊でもなんでもいいけど、そいつは将来最高の環境で生まれ変わる事決定じゃんよ。例えば俺と君の間にできる子供とか」


少し下卑たジョークで、話が合うか合わないか微妙に確かめながら、俺は反応を窺った。


「バカな事言ってるー。ひょっとして、もう名前まで考えちゃったりしてるの?」

「じゃあ、親子の字画を見るからさ、君の名前教えてよ」


比較的ノリの良い彼女は、俺の問いに淡々と自分の名前を吐き出した。


「三ヶ島沙樹。三に小さい『ヶ』に島。名前は沙羅双樹の略だよ?」

「沙羅双樹て。それって儚く散る前に掴み取らなきゃならない名前じゃね?」

「あ、凄い。沙羅双樹知ってるんだ?何それって言われるかと思ったのに」


少し驚いたような表情の沙樹に、俺はエンジンがかかってきたとばかりに笑いかける。


「おうよ、背後霊に聞いたから何でも知ってるよ俺」


……ちょっと今のは寒かったかな。

でも、彼女は淡々と言葉を紡ぐ。


「そうだよ」

「え?」

「君の背後にいる人ね、エスパーっていうか、凄い人なんだよ。なんでも知ってるんだから」

「は?」


沙樹の言葉に、俺が慌てて振り返ろうとした瞬間ー

俺の肩に、ポン、と軽く手が添えられた。


「あん?」


そのまま振り返った先には、見知らぬ男の姿があった。


「やあ、初めまして。ええと……紀田正臣君……だよね?」


優しい笑顔で話しかけてきたその男の顔を見て、俺の胸中にひとつの感覚が蘇る。

漠然とした、不安。


「……どちらさんっすか?」


訝しげに尋ねる俺に対し、明らかに年上である男は、右手を差し出しながら微笑んだ。


「俺は折原臨也。情報屋って奴さ」

「よろしく」



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あきゅろす。
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