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Confusion!!(修正前)
1.
人通りの多い一角に存在する高級マンション。
日も暮れた通りの中を行き交う雑踏は、思い思いの速度と目的を持って入り乱れているが、この通りで立ち止まるものは殆どいない。
視線を上げれば都庁を始めとした高層ビル群が目に入るが、この通りには、そうしたビジネス街とも駅前の繁華街とも違った空気が満ち溢れていた。


そんな町並みを窓から眺めながらー1人の青年が物憂げな目で溜息をついた。


「退屈だねえ。なにもやることがないというのは、実に退屈だ。この窓から人間観察でもしようかと思ったけれど、なかなか面白そうな人材が見つからない。……でもまあ、君で暇潰し出来るからいいけど」


そう言って、青年ー折原臨也は帰ってきたばかりの私の方を振り向いた。


「……私で暇潰ししようとしないで下さい」

「そうよ。暇があるなら仕事したら?」


私と波江さんの見事なW攻撃にも屈さず、臨也さんは大仰に両腕を開きながら言葉を返す。


「今のところ、やるべき仕事も家事も、君達が全部やってくれているからねえ。ああ退屈だ。
ねえ珠音、何か面白い事しようよ」

「「……殴っていい?」ですか?」

「断る。いいじゃん、その分はちゃんと給料払ってるんだからさ。雇い主に手をあげるのは得策じゃないと思うけど?
……って言うか、さっきから君達何なの?息合いすぎて気持ち悪いんだけど」

「それだけ臨也さんが嫌われてるって事ですよ」

「珠音の言う通りね。人間の方は貴方の事が大嫌いよ。
……まあ臨也の事は、報酬を貰った後で殴る事にするわ」


冷めた表情で呟く私達の言葉に冗談は全くなく、臨也さんは肩を竦めながら再び窓の外に目を移した。
波江さんは黙々と作業を続け、私はオレンジジュースを飲みながらケータイで昨日のチャットの過去ログを確認する。
昨日はどうやら帝人君と臨也さんしかチャットにいなかったようで、黄巾族の過去とかブルーなんちゃらと抗争したとか話していたようだ。

その時、波江さんが口を開いた。


「この妙な書類は?」

「その書類はいつもの粟楠会の事務所の方に送っておいて。ああ、あと……右端の棚の一番上にある青い封筒は配達証明郵便で刃金市の山田さんに、その二個下の棚の上から四枚目の書類を、左端の真ん中の棚にある黄色い封筒に纏めて、その上にある緑の封筒の中に割り符があるから、それを両方ともパソコンの住所録にある桜新町の取引相手に送っておいて。それが済んだら俺の机の上の債務者名簿をコピーして『ファンドルフェルドサンドリバーサイドファイナンス』の砂河原社長への封書を作って同封してくれ。そうしたら粟楠会の四木さんに【チョコレートの行方は今だ不明】ってメールを送信、直後にそのメールの履歴とデータをクリアにしたら、ここでボーッとしてる珠音のグラスにもう一杯オレンジジュースを追加。それで、パソコンの横にあるクロスワードパズル雑誌の84ページの空いている所に『ワレマドリロン』と『サメ』と『トランシルバニア』と『ナットウマキ』って入れて、最後に余った所は俺も解らなかったから君が答えを入れておいて」


脳年齢でも判定するかのような指示を、窓から一切振り返る事なく紡ぎ続ける臨也さん。

……ダメだ、私の頭では【チョコレート】しか理解出来なかった。


「貴方、今臨也の奴に軽くバカにされていたけど、良かったの?」


波江さんが私のグラスにオレンジジュースを注ぎながら尋ねる。


「……?」

「……何でもないわ」


訳も解らずキョトンとした表情をしている私に、波江さんは軽くバカにしたような視線を送ると、自分の仕事に戻っていった。


「……臨也さん」

「何ー?」

「私に何か言いましたか?」

「理解出来ない君が悪いんじゃない?」

「理解出来る方がおかしいです!」

「「理解出来ない方がおかしい」わ」


今度は波江さんと臨也さんのW攻撃が私に襲いかかってきた。

大人って怖い。ホントに怖い。

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あきゅろす。
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