Confusion!!(修正前)
2.
「……これって、紀田君だよね」
「え?珠音さん、正臣の事知ってるんですか?」
「うん。学校が同じで、少しだけだけど話した事があるんだ。
ねえ沙樹ちゃん、もしかしてさっき、紀田君がお見舞いに来た?」
「ええ、来ましたよ。でも、すぐに帰っちゃいましたけど」
少し哀しげに笑う少女。
そして彼女は、自分に言い聞かせるように呟く。
「正臣は、きっと戻って来ますよ。それは、決まってる事ですから。正臣がいくら他の女の子を好きになっても、最後の最後に、正臣はその女の子達よりも、私の方を強く愛してくれるんですから。
絶対に。絶対に……」
「……沙樹ちゃん?」
自分の世界に入ってしまった彼女にそう呼びかけると、沙樹ちゃんはふと我に返り「あ…ご、ごめんなさいっ」と言って私に謝った。
「紀田君の事、本当に好きなんだね?」
私がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑って頷く。
「珠音さん」
その後沙樹ちゃんは、真剣な顔つきで私に向き直り、
「私が正臣の傍にいられるようになるまで、正臣の事……宜しくお願いします」
と言った。
「……解った」
私はそう約束すると、彼女に挨拶をし、足早に病院を去った。
彼にー臨也さんに、話したい事があったから。
♂♀
「臨也さん」
私は部屋に入るなり臨也さんの元に行き、ちょっとだけ背伸びをして彼に向かってグイッと顔を近付ける。
「ああ、おかえり珠音。
どうしたのさ、そんなに深刻な顔して」
「臨也さん、紀田君の事知ってますよね?」
「うん、知ってるよ」
「紀田君は、黄巾族のメンバーだったんですか?それとも……今も黄巾族のメンバーなんですか?」
今日、沙樹ちゃんに見せてもらった写真の中で、紀田君は黄色い布を首に巻いていた。
だから私は、紀田君は黄巾族のメンバーだった、或いは今も黄巾族の一員なのではないかと考えたのだ。
「君は、どっちだと思う?」
臨也さんはニコニコと微笑を浮かべながら、互いの吐息がかかりそうな位私に顔を近付けた。
「っ、質問に質問で返すのは卑怯だと思いませんか」
「俺が卑怯なのは解りきってる事でしょ?」
……仰る通りです。
私は開き直っている彼に内心呆れながらも、さっきの臨也さんの答えに対する返答をする。
……だけど、その前に、
「……臨也さん、顔」
「顔が何?」
「近いです」
「……始めに近付けてきたのは君じゃないか」
そう言いながらも、彼は私から離れてくれた。
私も背伸びを辞めて普通に立って話す事にする。
「で、話を戻しますけど。
私は、紀田君は黄巾族のメンバーではあるとは思うけど……でも、黄巾族絡みの事で何かに悩んでいるように見えます」
「ふぅーん、そう。
それで?悩んでいる彼に対して、君は何をするのかな?」
「何もしませんよ。彼の問題は彼自身で解決しないといけませんから。
でも、敢えて言うなら……私は彼を守りたい」
「守る?」
「はい。沙樹ちゃんに言われたんです。『正臣の事、宜しくお願いします』って」
「美しい友情だねえ。実に人間らしいよ。
……でもさ、」
臨也さんは私に背を向け、窓から新宿の様子を見下ろし始める。
「『ダラーズ』と黄巾族は今緊張状態にあるんだよ?紀田正臣君を庇っていたら、『ダラーズ』を裏切る事になるんじゃないのかい?」
「何言ってるんですか今更。『ダラーズ』は横の繋がりが薄い集団でしょう?それに、黄巾族と『ダラーズ』とを掛け持ちしてる人だっているらしいじゃないですか。
あと、1つ言っておきますけど、私は別に黄巾族に入りたい訳じゃないんですよ?私が守りたいのは黄巾族じゃなくて、紀田正臣君という一個人です。黄巾族は関係ないでしょう?」
「なるほどね……でも、周りはそうは思わないかもしれないよ?」
「? どういう事ですか?」
私がそう尋ねると、臨也さんは肩を竦めて顔だけを私の方に向けた。
「だから、君は紀田君だけを守ろうとしてるつもりだったとしても、黄巾族とダラーズのメンバーは、君がダラーズを裏切ってるんじゃないかと疑うかもしれないって事さ。意味解る?」
「解ります。解ります、けど……」
私は、少しだけ迷ってから、言葉を紡いだ。
「いいんですよ、それで。
周りにどう思われようが、私は私。他の人は関係ありませんから」
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