Confusion!!(修正前) 1.(×3〜) 初めて沙樹ちゃんと会ってから数週間後。 私は、週に2〜3回ほどのペースで、沙樹ちゃんの病室を訪れている。 そして今日も沙樹ちゃんの元へと向かっていたのだが、その途中で茶髪の華奢な少年と再び会った。 「……珠音さん?どうして此処にッ……」 何故か紀田君は、少し焦ったような表情を浮かべている。 「ちょっと友達が入院してて、お見舞いに来てるの。 紀田君も?」 「あッいや……まあ、友達みたいな奴……ですかね」 曖昧に答える紀田君。 その表情がいつもよりも曇って見えたのは気のせいなのだろうか。 気にはなったものの、私も敢えて深くは問わずに、「そっか」と相槌を打つ。 「あ、それじゃ、俺は失礼しますね! ……あ、そーだ!珠音さん、こないだの約束、守って下さいよ?」 「……約束?」 「やだなあ!俺とお茶してくれるって言ったじゃないですか!」 「あ!そういえば……」 いつだったか、紀田君と杏里ちゃんと会った時、彼とそんな約束をしたような気がする。 「解った。約束だよ」 私がそう言って微笑みかけると、紀田君は心底嬉しそうに笑った。 その笑顔は、いつもの紀田君と同じ、人を安心させる太陽みたいな笑顔で。 私は思わず、去りゆく彼を引き止めていた。 「紀田君!」 彼は立ち止まって私を見つめる。 「1人で……何でも抱え込んじゃダメだよ。紀田君には大切な仲間がいるんだから。 悩みが有ったら……私で良かったら幾らでも聞くよ」 「……」 紀田君は少しの間黙っていたが、 「……やだなあ珠音さん!俺はエブリデイエブリウェア悩みなんてありませんよ!!珠音さんこそ、悩みが有ったら俺がぜーんぶ受け止めてあげますからねっ!それじゃ!」 と笑顔で言葉を返して走って行ってしまった。 私は、なんだかやるせない気持ちのまま、沙樹ちゃんのいる場所へと向かった。 ♂♀ 「珠音さんは、好きな人とかいないんですか?」 彼女の部屋に着いてから約15分後。 突然、沙樹ちゃんが私に尋ねてきた。 「いないよ。 私は……人の愛し方を知らないから」 そう言って彼女に微笑む私。 沙樹ちゃんの目には、私がどうやって映ってたんだろうか。 『愛を知らない可哀想な奴』? それとも、『変な発言をする頭のイタイ人』? ところが、沙樹ちゃんから返ってきたのは、意外な事にも驚きに満ちた表情だった。 更に沙樹ちゃんは、その表情のまま私に質問をぶつけて来る。 「珠音さん……本当に好きな人いないんですか?」 「……いないよ。 どうして?」 「いえ。ただ、何と無く……何と無く、珠音さんみたいな人が、人を愛せない筈ないかなって思って。 私には、珠音さんが少し苦しそうな顔してるように見えて…… あ、なんかすみません、失礼な事言っちゃって」 「……ううん、いいのいいの。気にしてないから。 沙樹ちゃんは? 好きな人いるの?」 私がそう尋ねた瞬間、沙樹ちゃんの表情がパァッと華やいだ。 「いますよ、とっても大切な人。 私の大好きな人」 「へえ……。どんな子?」 「うーん……格好良くて、面白くて、でも可愛くて、変に素直なとこがある人です。……あ、私写真持ってますけど……見ます?」 「ホント?見たい見たい」 そして沙樹ちゃんは、自らの携帯電話を開いて、待ち受けを見せてくれた。 だがその画像を見て、私はかなりの衝撃を受ける事になる。 「……え?」 だって、そこに写っていたのは、笑顔の沙樹ちゃんとー黄色い布を首に巻いた、さっき私が会ったばかりの少年ー紀田正臣君だったから。 [次へ#] [戻る] |