「はぁ……やっぱり上手くいかないなぁ」
アーチェは一人、調理場でため息をついていた。
「何を持っているんだ?」
「げっ!アル!」
アルクが後ろからお皿を持っているアーチェに声を掛けた。
アーチェはためらいがちに振り向いた。
「じゃじゃーん!アーチェ様の特製料理よ!」
「……それは、料理なのか?」
「失礼ね!!」
アルクが顔を引きつらせるとアーチェは頬を膨らませた。
「見た目ほど味は悪くないわよ!!」
「そうなのか?」
「せーっかくアンタにあげようと作ったのに!」
「僕に?」
アルクがそう言うとアーチェはしまったというように口に手を当てた。
「い、いつも、修行に付き合ってくれるし……ひ、日頃のお礼よ!そんだけ!」
アーチェが慌てて弁解する。
「そうか。なら、食べてもいいか?」
「え!?」
「見た目ほど味は悪くないんだろ?」
「で、でも……」
アルクは無理矢理アーチェからお皿を奪った。
「ちょっと!」
「いただきます」
「あ!」
アーチェが止める間もなく、アルクはその謎の料理を食べた。
「…………………………………………美味しい、ぞ」
「そんな青ざめて言っても説得力ないわよ!」
「まあ、味はヒドいな」
アルクはそう言いながらもう一口食べた。
「ちょ、ちょっと!マズいんでしょ!?」
「そんなもんじゃない」
「だったら食べなくていいわよ!」
「確かに、味はヒドいんだが……」
アルクは言いにくそうに顔を背けた。
「何よ?」
「僕に、作ってくれたのだろう?」
「ま、まあ、そうだけど」
「アーチェが僕に作ってくれた。だから、これは美味しい」
そう言いながら手を休めることなく食べ続ける。
「……ばか」
アーチェは少し赤くなった頬をアルクに見せないようにうつむいた。
「ごちそうさま、アーチェ。美味しかった」
「何よ、イヤミ?」
「本心だ。出来たら、今度は味も美味しいと嬉しいが」
「また作るかなんてわからないじゃない!」
「そうか」
「まあ、作ってほしいなら作ってあげるわよ?」
「……」
「そこで黙らないでよ!」
「ああ、すまない」
「もう!」
拗ねるアーチェを見てアルクはクスリと笑った。
アルクが笑うのが珍しくて、アーチェは思わず赤くなった。
「このあとリッドとスタンと予定が入っているんだ。またな、アーチェ」
「バイバーイ」
「料理、練習しといてくれ。味はともかく、嬉しかった。ありがとう」
そう言ってアルクは調理場からいなくなった。
「……ホント、ばか」
空っぽのお皿を持って、アーチェが呟いた。
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