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「に、ニトちゃん」
「ピアンさん。なんですか?」
ニコリと笑うニトに対してピアンはうつむいた。
「あ、あのね」
「はい」
「わ、私と一緒に、お仕事、しませんか?」
顔を真っ赤にしてピアンが呟いたのはそんな言葉だった。
「そんなに固くならなくていいんですよ」
「う、うん……」
「いいですね。行きましょう」
「う、うん!」
「誰か他にも誘いますか?」
「私は、誰でもいいよ。ニトちゃんは、チェスター君がいい?」
「え?」
「ニトちゃんは、チェスター君とラブラブでしょ?」
ピアンに直球で聞かれてニトは少し困ったように笑った。
「そうですね。ピアンさんは、気になる方とかいらっしゃらないんですか?」
「え?」
考えてもみなかった質問にピアンは驚いた。
「わ、私は、そういうのはないよ」
「そうなんですか。ピアンさん、可愛らしいし人気もあると思うのですが」
「え!?」
今度はピアンにしては珍しく大きな声をあげた。
「そ、そんなこと、絶対に、ない、よ」
「そんなことありませんよ。あ、そうです!やっぱり、チェスターは誘いましょう!」
「う、うん?」
「チェスターに誰か連れてきてもらいましょう!」
「うん?」
「ピアンさんを好きな人、絶対いるはずです!頼んできますね!」
「え、あ、ニトちゃん」
ニトは楽しそうにいなくなってしまった。
「どうしよう……嫌な予感がするんだけどな」
ピアンはため息をついた。
「ピアンさん!」
「に、ニトちゃん」
嬉しそうにやって来たニトにピアンは顔をひきつらせる。
「は、早かったね」
「はい!ずっとあの方はピアンさんを好きなんじゃないかと思っていたので!」
「あの方?」
「ニト」
「あ、チェスター!」
「よぉ、ピアン」
「こ、こんにちは、チェスター君」
「よろしくな」
「うん!」
「チェスター、あの人はまだなんですか?」
「来てねぇのか?」
「はい。まだ来て……あ!」
「え?」
ニトが見たほうをピアンも見る。そしてある人物を見つけて顔をひきつらせた。
「スパーダさん!こっちです!」
「え!?」
「ンだよ。俺じゃ不満だってのかよ?」
「う、ううん!ち、違うよ」
首を振るが、内心冷や汗ダラダラであった。
「やっぱりこうなるんじゃねぇか。悪ィな、ニト。他のヤツを誘ったほうがいいぜ。じゃあな」
そう言って去ろうとするスパーダ。
「あ、待って!」
それを見たピアンは慌てて追い掛けた。
「ンだよ。俺じゃ嫌なんだろ?」
「そ、そんなことないよ」
「嫌々誘われてもこっちも不愉快なんだよ」
スパーダにそう言われてピアンはハッとした。確かに自分の態度は失礼だった、と。
「わ、私は、スパーダ君が苦手だよ」
「やっぱそうなんじゃねぇか」
「でも、嫌いだなんて思ったことはないよ」
「!」
スパーダは驚いて振り向いた。
「ご、ごめんね。でも、きっと、慣れるから。だから、一緒に行こうよ」
ピアンはそう言ってスパーダの手を握った。
「なっ……バカ、離せよ!」
「い、行くって言うまで、離さないよ」
「ピアンさん積極的ですね」
ニトのその声にピアンは顔を赤くした。
「わ、私、そんなつもりじゃない!」
「いいんじゃねぇか?お前らお似合いだと思うけどな」
「全っ然そんなことないよ!」
「ピアンさんって大きい声も出たんですね!」
「だから……え?」
急に話から逸れたことを言われてピアンはきょとんとした。
「まあ、いいか。行くんだろ?スパーダ」
「……仕方ねぇから行ってやるよ。だから離せ!」
「あ、ご、ごめんね」
「行くぞ!」
「スパーダさん真っ赤です」
「うるせぇ!」
「でも、よかったですね!」
「お前、ピアンに嫌われてねぇんだな。絶対嫌われてんだと思ってたのによ」
「き、嫌いじゃないよ。だってスパーダ君はいい人だから」
ピアンがニッコリ笑うとスパーダは帽子を深く被って早足で歩き出した。
「あ、ダメですよ!スパーダさん!ここは照れてる場合じゃありませんよ!」
ニトも小走りでスパーダを追った。
「なんでスパーダがいい人なんだ?」
「だって、サラ君がそう言ってたから」
「……それだけか?」
「うん」
これは前を歩く二人には言えないな、と思ったチェスターだった。
コノさん宅のカップリングを活かしたかったのですが若干ピアン寄りな話になってしまいました(´v`;)
この二人は素直になれない我が家のスパーダを応援してくれそうだったので!笑
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