05 「よろしく!ガイ!」 「ああ、よろしく」 ガイが女性恐怖症故なので握手は出来ないものの、ムヨはガイと楽しそうに話していた。 「お、ルーク」 「あ、ガイ。そっちはえっと、新入りの人か?」 「うん!私は……」 名乗ろうと振り向いてムヨは思わず固まった。 「髪が、短い……」 「え?」 「あ、ごめん!なんでもないの!私はムヨ!」 「俺はルーク!よろしくな!」 「うん!よろしくね!」 「……なぁ、俺、ムヨとどっかで会ったことねぇか?」 「え、ないんじゃないかな?」 「そうだぞ。お前が会ったことがあったら、おそらく俺もあるはずだ」 「そうかなぁ……」 「少なくとも、私の知ってるルークじゃないよ」 「何か言ったか?」 「なんでもない!それじゃあ、私他のみんなにも挨拶してくるね!」 「あ、ああ」 そう言ってムヨは部屋を出た。平静を装うとしていたが、明らかに動揺していた。 「髪も、性格すらも違うなんて。当たり前なんだけど、ボクの知ってるルークじゃないよ……」 そう呟いてからムヨは自分の頬をつねった。 「ボクの知ってる人達とは別人なんだから、それをわかって行動しなきゃ。あ、またボクって言ってるよ……」 そう呟きながら隣の部屋に入った。 「こんにちは!」 ムヨがそう言うと金髪の女の子がニッコリ笑って「こんにちは」と返した。 「私、今日からここで働くんだ!よろしくね!」 「そうなんだ。私はコレット。よろしくね」 「私はムヨ!」 「ムヨだね。あ、ロイドだ。紹介するね」 ドアのほうを見るとそこにはロイドがいた。 「あれ?お前……さっき会ったな」 「うん!今日からここで働くんだ!私はムヨ」 「俺はロイド!よろしくな!」 笑ったロイドを見てムヨは少し安心した。 「あれ?俺、今日以外にお前に会ってないか?」 「そ、そんなことないよ」 「そうか?」 「そうそう!じゃあ私は挨拶続けるね!」 「またあとでゆっくり話そうね」 コレットがニッコリ笑うとムヨもニッコリ笑ってうなずいた。 そして廊下でムヨは安堵したようにため息をついた。 「ロイドはロイドだった。よかったぁ……」 「ムヨ?」 聞き慣れた声にムヨが素早く反応すると、見慣れた黒髪の少年がいた。 ムヨも声に出さず彼の名を呼んだ。 「どうして、私の名前を知っているの?」 「僕は今、お前の名を呼んだのか」 「うん。ハッキリ言ったよ」 「わからない。僕はお前に会ったことはないと思うんだが」 「私もあなたを知ってるような気はするけどね、とりあえず今の私はただのギルドの新入りだよ。私はムヨっていうんだ。よろしくね!」 「……リオンだ」 それだけ言うとリオンは元来た道を引き返して行ってしまった。 「ボクは君をよく知ってるよ、エミリオ」 ロイドもリオンも自分の知ってる二人と変わらない。けれど、大きく違うのは、二人は自分を知らないということ。 「挨拶、続けなきゃ」 泣き出しそうになるのを堪えてムヨは次のドアを開けた。 [*前へ] |