A 「リオンさん!ご無事でしたか!」 笑顔で出迎えたのはフィリアだった。 「あら?リオンさん、そちらの方は……?」 「あんたフィリア・フィリス?こうやって近くで見たほうがよっぽど可愛いな」 「は、はい?」 「気にしないでくれ。それよりフィリア、ムヨを寝かせたいんだが」 「ムヨさんも倒れてしまわれたのですね」 「他にも誰か倒れたのか?」 「レッドさん、アルさん、ルキさんが倒れてしまわれたんです」 「全員かよ!?」 テレジアという青年が声をあげた。 「思ったよりマズい状況なんじゃねーか。来て正解だったな」 「あ、あの方々のお知り合いなのですか?」 「まあな」 「……とりあえず、話は後にしましょうか。リオンさん、こちらへムヨさんを」 「ああ」 フィリアについて行くリオン。部屋に入るとレッド、アルク、ルキが眠っていた。 「ムヨさんをこちらへ」 そう言われてリオンはムヨをそっと寝かした。フィリアはそれを見ると静かに出て行った。 「お前は、一体……」 ムヨを見つめながらそう呟くと、リオンはテレジアに向き直った。 「テレジア、といったか?」 「ああ。それが名前だ」 「信用ならないな。何の目的でコイツらに近付く」 「オレは知り合いだって」 「4人が気絶していたら証拠はない。それにテレジアというのは、この世界の名前だ。ムヨが守りたい、世界の名前だ。お前は一体何者だ?」 「……案外熱いんだなぁ」 「黙れ!返答次第では、僕は貴様をムヨに近付けるわけにはいかない!」 「……コイツらが、目覚めてからじゃダメか?」 「ああ」 「でも、これを信じてくれるとは思えねーんだよなぁ……」 そう言ってテレジアはため息をついた。 「オレはテレジア。この世界の世界樹の精霊だ」 「…………は?」 「だから言ったじゃん。信じてくれねーだろ?頭おかしいみたいで嫌なんだよ」 そこまで言うと急に扉が開いた。 「レッド!」 勢いよく入ってきたのはカノンノだった。レッドを見付けて駆け寄って、周りを見た。 「アルとムヨとルキまで……」 また走ってくる音が聞こえた。 「アル!」 「ムヨ!」 「ルキ!」 アーチェ、ロイド、リッドが入ってきた。 「お前達は、アイリリーの……」 「アルったら!なんで倒れてんのよ!」 アーチェが叫んでアルクに駆け寄り、リッドは無言でルキに駆け寄った。 「ムヨ!しっかりしろ!」 ロイドも声をあげてムヨに駆け寄った。 「ムヨ…………あれ?お前は……ドープルーンのムヨ達の仲間か」 「な、仲間?」 「違うのか?」 「…………いや、違わない」 ロイドにもテレジアにも、リオンのその表情が彼の前髪で見えなかった。 「自己紹介がまだだったな!俺はロイド・アーヴィング!」 「リオンだ」 「リオンか!よろしくな!」 笑って言うロイドと無表情のリオン。 「なぁ、リオン。ちょっとそこに代わってもらっていいか?ムヨの側についてたいんだ」 「!お前……」 「なんだ?」 「ムヨが、好きなのか?」 「!」 リオンがそう言うとロイドは赤くなった。 「そうか」 「ああ……」 ロイドは視線を逸らしながら恥ずかしそうに頬を掻いた。 「なら、僕もここをどくわけにはいかない」 「なっ!?お前……」 「!僕は、何を……」 「へぇ。やるじゃんムヨのヤツ」 「あんたもムヨの仲間か?」 「オレはテレジア。世界樹の精霊だ」 「へぇ、そうなのか!よろしくな!」 「何故すぐ受け入れる!」 「だってコイツ、嘘は吐いてるように見えないぜ?」 「ロイド、お前……いいヤツだなぁ!!」 「うーん……」 レッドのベッドから声がした。 「レッド!大丈夫?」 「カノン、ノ……?」 「気が付いた?よかった…」 「レッドは目覚めたみたいだな」 「ここは……」 「アル!」 「僕はどうして……?」 「もう!働き過ぎで疲れてたんじゃないの!?」 「アーチェ、なんでいるんだ?」 「な、何よ!いたらなんか悪いの!?」 「いや……」 「アルも目覚めたか」 しかし、未だに眠り続けるムヨとルキ。 「ムヨはここか!?」 「ルーク!あまり騒いでは迷惑よ!」 「ティア?」 アルクはドアのほうを見た。 「アルク……無事だったのね。よかったわ」 「ああ、ありがとう」 「ムヨっ!!」 「ルーク!うるせぇって!」 走ってきたルークに声を掛けるロイド。 「なんだよ。先越されちまったな」 「お坊ちゃまが何の用だ?」 「お前に言われたくねぇよ!……それよりムヨはまだ起きてねぇのかよ?」 「ああ」 「どけよ、お前ら」 「なんで僕がお前に従わなくてはならないんだ」 「お前らじゃ起きなくても俺なら起きるかもしれねぇだろ?」 「そ、そんなことねぇよ!」 「ほら、どけって。ムヨと俺の仲を邪魔すんなよ」 「お前ムヨに相手にされてねぇだろ!」 「お前だってそうじゃねぇか!」 「ねぇ、リオン。あの二人黙らせてくれない?」 「ああ。倒れたのにうるさくして悪かったな」 そう返してからリオンはバッとベッドを見た。 「ムヨ!」 「おはよう、リオン」 「「ムヨ!?」」 「もう大丈夫なのか?」 「うん!うるさくて寝てられないしね!」 「う……」 「わ、悪かった」 「あはは!ありがとう二人とも!」 「ムヨ……僕は、」 「ルキ!?なんでルキが倒れてるの!?」 ベッドから勢いよく飛び降りてルキの側に駆け寄った。 「ルキ、目覚まさないの?」 「ああ」 「ルキ……」 「ん、リッド……?」 「ルキ!やっと起きたか!」 「ムヨも……私はどうしたんですか?」 「ナナリーと喋ってて、いきなり倒れたらしい」 「そう、ですか」 「よかった!ルキ!」 「お前もさっきまで倒れてたじゃねぇか」 「ボクは頑丈だもん!」 「そんなことありませんよ。ムヨだって女の子でしょう?休んでいたほうがいいですよ」 「平気平気!」 ムヨが飛び跳ねると突然ムヨの頭に枕がぶつかった。 「何が平気だ。ちゃんと休んでいろ」 「いったぁ……」 ムヨは思わずしゃがみ込んだ。 「あ、リオンさん!ご無事で何よりです!」 「ああ、アイツがいなくなったっていうリオンか」 しゃがみ込んだムヨをスルーするルキとリッド。 「お前!病人のムヨに!」 ロイドがリオンに掴み掛かるとムヨが立ち上がった。 「……くない」 「へ?」 「痛くない!」 「当たり前だ。お前、僕を見くびっているんじゃないか?」 「リオン……!!ボクを心配してくれたんだね!!」 勢いよく顔をあげたムヨの頬を掴んだ。 「いひゃい!」 「足手まといになるなと言っただろう」 「ごめんなふぁいごめんなふぁい!ほんろに、いひゃいって!」 「全く……」 病人と見舞いに来た人がいる部屋なはずなのに、どういうわけかいつまでも騒がしかった。 [*前へ][次へ#] |