勝手にやってろ/ひぐらし/圭一甘? 「私に決まってんでしょお!」 教室に一人の少女の声が響いた。 もう学校の時間は終わっていたから、教室に残っている生徒の数はあまりいなかった。 しかし、そのせいで響きが余計に広がっていく。 残っていた生徒はその声のほうに視線を向けた。 視線は教室の隅―――掃除用具が入っているロッカーの目の前にいる男女二人。 「いぃや、俺に決まってんだろ」 「ふざけんなよ私のほうが上よ」 何を争っているのだろうか? テストの点。 体育の記録。 身長。 いろいろある。 代表として、かもしれない。部長でありクラス委員長である園崎魅音は二人に話しかけた。 「どうしたの?名無しも、圭ちゃんも」 「「こいつが!」」 お互いの顔を指差した。 そしてその顔は二人とも魅音に向けられている。 「落ち着きなよ。何があったか話してみなよ」 二人は仲が良い。ケンカするなんて珍しいのだ。 「…圭一が」 「いや、名無しが!」 お互いを責め合っては何も解決しない。 魅音は二人をなだめた。 「何かあったか言いなさい。ほらっ」 「あのね!圭一にね、私がね… 圭一のこと好きって言ったら、圭一が俺のほうが好きって言い出すから だから私が私のほうが好きだって言って、でも圭一がムキになって俺のほうがって言い出して」 ピキ。 口元を引きつらせたのは魅音だけじゃなかった。 「当たり前だろ!俺のほうが好きに決まってるのに名無しこそムキになってさぁ、俺のほうが好きに決まってるだろ」 「私のほうが好きに決まってるわよ!」 教室にいた人全員が呆れを現す。 私のほうが! いや、俺のほうが! 私に決まってる! 俺だってば! 「さー、皆帰ろうか」 魅音たちから笑顔が消えた。 もういい。無視ろう。 帰ろう。 「「魅音!!」」 「勝手にケンカしてろ!」 終わり *前**次* |