Long 『HUNTER×HUNTER』 6 4時間粘って、収穫なし。 そう言ったみんなを尻目に、俺は少し肩身が狭かった。 炎狼がこちらを見て首を傾げる。 うー… 言った方が、良いんだろうけど… 言えないのは、何故だろう。 ヒソカと戦って欲しくない? 蜘蛛の情報を与えたくない? 蜘蛛と関わって欲しくない? 全部…あたりだろう。 「ユウキ?どうかした?」 はっと我に返れば、ゴンが俺の顔を覗き込んでいた。 顔を上げたら、ゴンだけじゃなくてキルアもレオリオもこっちを見ている。 炎狼も、心配そうに足にすり寄って来た。 「ごめん…何でも、ないよ」 「そう?じゃあ、行こっか」 笑って行ったゴンに、俺は笑顔で頷く。 キルアの腕を引っ張って先に行ってしまったゴンを見ていたら、レオリオが話しかけてきた。 「で、何があったんだ?」 「え…?」 レオリオに視線をやれば、珍しく…と言ったら失礼かも知れないけれど、真剣な顔をしている。 俺はその顔を見れば、ウソは通じないだろうとも思ったし、吐けないとも思った。 内心、ため息を吐いて話す事にする。 「その…蜘蛛のメンバーかも知れない奴に、会ったんだ」 「あの紙の奴か?」 驚いたように聞き返してくるレオリオに、俺は目を伏せて首を振った。 「いや…けど、多分、蜘蛛だ」 先を行くゴン達を見ながら、聞こえない程度で2人で話す。 主「その紙に居た人と、以前に接触してたのを見た事がある奴」 レ「それだけで、蜘蛛と言えるか?」 まあ、そうなんだけどね。 でも、俺は心のどこかで、ヒソカが蜘蛛ならいいと…思ってしまっていたんだ。 主「そうだけど…部屋に、入れてたから」 そう言ったらまたレオリオの驚いた声が聞こえて、俺は大きくため息を吐く。 吐いた息を吸ったら、今度は大きく伸びをして言った。 主「うーん・・・ごめんな、忘れて?」 ヒソカが蜘蛛だったら、また逢えるかも…なんて思った事は忘れる。 あの人がただの蜘蛛の仲間だったから、会いに来たのかもって思った事も。 レオリオに愚痴ってしまった事も、レオリオには忘れて欲しいなぁ…なんて。 笑って誤魔化す。 レオリオが適当に返事をしたのを聞いたら、ぶんぶんっと頭を振りまわした。 今は、こういう事は考えない方がいいよね。 「うん!」 ぐっと腕に力を入れて意気込んだら、炎狼が不思議そうに見上げてくる。 「へへ…頑張ろうね」 「おん!」 今は…誰が、とか、何が、とか…置いておこう。 蜘蛛は捕まえる。 G・Iは手に入れる。 その為の資金を集める。 「今はこれを頑張るだけ!!」 ぐっと腕を上に突き出したら、強そうな人の気配。 ばっと振り返ったら、あの紙に書いてあった中でも一番若そうだったあの人。 まあ、見た目は爽やか好青年? 「あっ!」 やっちゃた… さっきまで叫んでた勢いで、思わず大声を出してしまった。 例に漏れず、その人も振り返ってきた訳で。 直ぐさま視線を外したけど、遅かった。 その人はこっちに向かって歩いてくる。 ああぁぁー… 最近の俺、注意力散漫。 「どうかした?」 あくまで爽やかな態度で接されて、俺は途端に恥ずかしくなった。 まあ、一つ良い点があったとすれば…ゴン達が先に行ってくれていた事だ。 「いいえ?ただ、知り合いに似てたもんで…すいません」 笑って誤魔化せば、その人も笑ってそうですかなんて返してくる。 ああ、気まずい。 端から見たら俺達は今、笑顔で会話してる事だろう。 けど、どっちも作り笑いです、すみません。 [*前へ][次へ#] [戻る] |