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Long 『HUNTER×HUNTER』

朝目が覚めたら、目の前には笑顔のヒソカが居た。
一気に昨夜の事が脳裏にフラッシュバックして、思いっ切り顔を逸らしてしまった。

顔が熱い。何だこれ。
恋する乙女か!?ふざけるな、俺!!

すっと腕を回されて、俺は抱き締められると解っていたけれど、甘んじてそれを受け入れた。

俺よりも広いその胸に額をくっつけていたら、微かに薫る俺と同じ石けんの香り。
そしてそれと同じく薫るのは、ヒソカの匂い。
ちょっと照れくさくなって、身体の向きを反転させてみた。

ただ寝返りを打つだけの行為なのに、腰に鈍い痛み。
甦った記憶と、小さな怒り。

結局、あの後も何回かやられて、2,3回位で、もう数える余裕をなくしてしまった。

結局、最後まで互いに愛の言葉はなし。
解っていた事だし、むしろ、口を滑らせなかった自分を誉めてやりたい。・・・実は何回か危なかった。

後ろ首に髪越しに口付けられて、何となく前髪を持ち上げる。
余り力を入れてなかったからか、あっさりと指から滑り落ちていくそれをぼーっと眺めていたらヒソカの声が聞こえた。

「最近、髪結んでないね」

「ん…今までは中途半端な長さでさ、結ばないと首がくすぐったかったから。最近は結構伸びて、このままでも大丈夫だし…」

忘れていた、というのが7割。
今までは結ばないと首元がチクチクしたり、擽ったかったりで、耐えられずに結んでただけだ。

さらさらと後ろ髪をヒソカに弄られて、心地よさに瞼を閉じた。

もういっそのこと、さっぱりと切ってしまうか…
それとも、このまま伸ばしておくか…
っていうか、伸ばし過ぎも邪魔かな?
うーん・・・

「触り心地の良い髪だね」

ヒソカがちゅっと髪に口付けて、発した言葉。
単純になってきてしまった俺は、そんな一言であっさりと髪を切るという選択肢を破棄した。

伸ばすかどうかは置いておいて、少なくとも、短くするのはやめておこうと思う。

「俺の髪、好き?」

「そうだね…好きかな」

さらさらと弄ばれている髪を背後に感じながら、少し調子に乗って聞いてみる。
適当に会話に混ぜておけば、大丈夫だ。
良くある事!日常会話!そう、自分に言い聞かせて、できる限り平静を装ってその一言を続けた。

「じゃ…俺、は?」

「んー、好きだよ」

髪に口付けて、なんでもないかのように発せられたその単語。
ちゃんと耳に届いたし、聞き間違いではないようだ。

では…なぜ、意図も簡単にその単語を発せられたのか、だ。

答えは簡単。
髪が好き、と言うのと同意義だから、だ。

つまり、あの猫可愛い、好き。
あの色綺麗、好き。
そんなノリだ。
・・・自分で言ってて虚しくなってきた。

「シャワー浴びてくる…」

ヒソカの腕を解いて、ベッドから這い出る。
ヒソカにしては珍しく、制止もされなかったが、それが逆に追い打ちに感じた。

お湯をはっている内に、とシャワーを浴びていても、考えるのはやはりヒソカの事ばかりで。
本当、厄介なものだ…

「…っ!解って、居た事だ…」

ヒソカが俺を好きになるハズがないと。

だから興味の対象でいられるよう
に、人知れず特訓をしたりもしていた。
恋愛感情じゃなくていいから、どうでもいい存在になりたくなかった。

今までは、ただそれだけだった。
けど今は…さっき、一瞬だけど…俺を好きになれ、とか思っちゃったよ…

「どんだけ欲張りなんだ、俺は…」

「何か欲しいのかい?」

・・・聞かれてた!?

バッと振り向いたら、ドアの前に立っているヒソカ。

振り向いた衝撃に耐えきれずに腰が悲鳴を上げて、俺は腰を押さえながらその場にへたり込んだ。
最悪だ…

「どこから居た?」

腰に手を当てて座り込んだまま、顔だけ振り返って問いかける。
あまり声には出していなかったとはいえ、今はどんな顔してたかも問題に上がる。

「どんだけ欲張りなんだ、って所かな?」

微笑んで首を傾げながら告げられたのは、一応、安堵出来る答えだった。
よかった、とため息を吐いたら、ヒソカに抱き上げられてしまった。

「な、にっ!?」

シャワーの蛇口を捻って止めると、俺を抱いたまま、やっと溜まってきていた湯船に浸かるヒソカ。
一緒に入る気なのか…

「狭い」

目の前にはやたらご機嫌な奇術師さんがいて、だんだんとお湯が増えてきたとはいえ、足りずに上半身が外気に晒されているこの状況。
寒いし恥ずかしいし狭いし…不快だ。

ぶすっとしながらたまらないお湯をべしべしと叩いていたら、すっと伸びてきた手。
綺麗な指先がさらりと俺の髪を撫ぜた。

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あきゅろす。
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