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Long 『HUNTER×HUNTER』
14
首を傾げた炎狼は、俺より先にその中に入っていって、安全確認をしている。
大丈夫だよ、とばかりに振り返る炎狼に、俺は御礼を言って中に入った。
すると、今度は・・・

「なんで着ぐるみ!?」

うさぎさんと言う言葉が似合いそうな、もこもこのでっかい着ぐるみが桜の木に手を伸ばしていた。

「ああ…お前か。前回の客が子供だったものでな」

今まであまり自分の方の情報を明かさなかったあいつが、前回の客の事に触れた事に驚いたが…それよりも今気になるのは、それを脱ぎ捨てて出てきたあいつの姿だ。

「何時、性転換した」

「しておらん。馬鹿者め」

なら何故、ウサギの着ぐるみから出てきた見慣れた筈のあいつに、胸があって、バニー姿!?

女装趣味もここまで来たのか…
ついに本物もびっくりの偽乳ができたらしい。

「違うわ!愚か者め。今元に戻る」

言うが早いか、風を纏う…というか、風が舞って一瞬視界が隠される。
去った突風に安心して目を開けると、男姿になったあいつ。

「・・・着替えろ」

今までにない位に、俺は殺気を放っていただろうと思う。

きちきちのバニー服を着ていて、足なんか太くなってるもんだから、網タイツはビリビリだ。
その上、さっきまでの美女姿ならまだしも、男の顔でむすっとしたまま、威張ったように胸を張るな。

まあ、一言で言えば…
ニューハーフバーのマッチョさんもビックリの気持ち悪い女装だ。
・・・行った事ないけどな。

「失礼だな」

その声に苛ついて外していた視線を戻せば、桜によくあう着物姿。
髪はなぜか長いままで、後ろで緩く一つに纏めていた。

「・・・どことなく、まだ女装に見えるのは何故だろう」

「お前はそれを言いに来たのか」

あ、怒った。
すっと歩き出したそいつが一瞬視界から消えて、ため息を吐いてからそいつを視界に再びとらえた。

…今度は学ランかよ、おい。



「で、何用だ」

なんか…今回はすこし和風な話し方じゃないか?
っていうか…なんで、青空教室。

桜舞う中、開けた場所には裏がホワイトボードの黒板と、幾つかの机と椅子。
あいつの顔を盗み見れば、上機嫌で教卓に座って、黒板に落書きをしている。

「ノリノリか」

「気にするでない。何用で来た?」

「俺は…ゴン達と旅団と、どちらの味方に付けばいいのかな…と」

カツカツとチョークをならしながら、何故か俺の世界で有名な某猫型ロボットを書いている。
小学生レベルのその絵に小さく吹き出しながら、俺は適当な机にあぐらを掻いて座る。

ふと、振り返ったそいつの手には何故かマジック。
きゅきゅーっと音を立てるそれは、空中に文字を並べていく。

『悩むのならば、何もしなければ良い』

なんで口で言わないのか…は、置いておくとして。

「何もしないなんて出来る訳がない!!でも、俺がどちらかに荷担した時点で、全てが変わってしまいそうなんだ!!」

あの物語は俺が居ないから、あの結果で終われたのだ。

だから、もしも俺がゴン達に付いたら、きっと…もっと沢山の旅団を倒せたかも知れない。

逆に旅団に付けば、もしかしたら…鎖野郎(クラピカ)を捕まえて、殺してしまったかも。
ゴン達も…どうなるか解らない。

「俺は…本当は、存在するはずのないものだから」

言い終わると共に、またマジックの音が聞こえて顔を上げる。
炎狼が遠くで桜と戯れているのが見えた。

『何を望む』

俺の…望み?

それは、ゴン達に死んで欲しくない。
けど、旅団にも…もう、死んで欲しくないと思っていた。

「誰も死ななければ良いなんて…甘いんだろうなぁ・・・」

「可能だ。特別に教えてやるが、お前が居た世界は本当のH×H世界ではない。俺が似せて作り上げた、いわば仮想空間だ。お前が望むのなら…アイツ等が仲良く暮らす別空間に送る事も可能だ」

きゅきゅっと音を立てて描かれたのは、四つの円。

一つには元の世界、と次にはココと、その次にはH×H、最後に新しい世界…と、それぞれに書いて見せた。

行きたい、と…一言言えば、彼らがみんな笑顔で暮らす世界へと行ける。
なのに何故…

「行けない。俺は…あの世界で、みんなを生かしたいんだ」

「答えは出ているのではないか」

・・・そうみたいだ。
遠くに居た炎狼を見やれば、にこっと微笑んで消えた。解ってたみたい。

「帰る!!」

彼らを、助けたい。

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