Long 『HUNTER×HUNTER』
12
暇だし、誰もいないし・・・
こうなったら修行だー!!
「炎狼!!」
ヒソカも居なくなって、俺も落ち着いてきた所で…
俺は瓦礫のもっと奥の方に腰を下ろして、炎狼を呼び出した。
呼べば現れて、辺りを見渡す炎狼。
あー…癒しだ。
ぎゅっと抱きつけば、どうしたの?と首を傾げて見せて、俺は思い出したように離れた。
「そうだった。修行だ」
待ってて、と炎狼に言えば指示通りにぴたっと動きを止める。
俺は両目を閉じて、炎狼にかざした手に意識を集中させる。
小さく…小さく…
隠密でも、偵察でも可能な位に…小さく…
恐る恐る目を開けたら、見える筈の位置には炎狼の姿は無くて。
ドキドキしながら視線を下げたら・・・成功だ。
すっと炎狼の前に手のひらをやれば、とととっと乗ってくる。
そのまま俺の目線の高さまで上げて、俺は笑顔で声を掛ける。
「成功かな!?変な所とかない?」
「大丈夫だよ」
にこっと笑った炎狼からは、何かをガマンしている風でもないし。
ホントに成功したみたいだ。
俺はもう片方の手を翳して、大きく深呼吸をする。
もう一匹…
炎狼を、もう一匹…
すすすーっと両側に別れていく炎狼。
完璧に離れたかと思うと、炎狼は2匹となった。
「はぁっ…大丈夫?」
炎狼を観察すれば、一方はいつもの炎狼と変わらず無限鞄を背負っている。
けど、もう一方の炎狼は無限鞄を持っていない。
持っている方がオリジナル、と言う事だろうか?
「うん。でも、」
「ユウキ…辛そう」
心配そうに見てくる炎狼は、癒やし度二倍。
俺は笑って、炎狼を床に降ろさせて、炎狼にはそれぞれ逆方向に移動して貰う。
目に集中すれば、右に行かせたオリジナルの炎狼の目線になる。
右目からは炎狼の視線、左目からは俺の視線が見える。
今度はもう一方の炎狼に集中すれば、今度は左目がその視線になる。
右目からの炎狼の視線が上手くやめられなくて、俺としての視界がなくなってしまう。
そっか…
恐らく、炎狼は両方とも炎狼だから…オリジナルでもない限りは、視界がばらせないのかな…?
「いいよ、おいで」
それぞれに声を返れば、急いで駆け寄ってくる可愛い子。
ネズミサイズだから、余計の事ハムスターみたいで可愛い。
俺の目の前に集合した2匹に手を翳す。
今度は大きくさせる。
すすすーっと別れた時と似たような動きで、今度は大きくなっていく。
ふと、ぴたりと止まってしまって、それ以降はどんなに力を込めても大きくならなかった。
ふむ…
2匹の場合は、半分以上には出来ないのかな?
「暗いなぁ…」
炎狼をしまってしまった所為でまたまた暇になった俺は、とりあえず建物内をうろうろとしてみる事にした。
まあ、夜目は利く方だから、それなりに見えるしね。
どごぉ?
半端なく大きな音が二つ同時に聞こえて、俺は考えられる一番の理由についつい吹き出してしまった。
「ぷはっ…ゴンとキルアか」
上かぁ…
何回も続く破壊音に、ついつい笑い声が漏れてしまう。
「キルア!!いるか!?」
「ああ。いるぜ!!」
「2人であいつぶっ倒すぞ!!」
ふうん…
気配消すの、異様に上手くなってない?
ゴンの挑発的な言葉と共に、気配が消えてしまう。
ああ言ったって事は、襲わないんじゃないかなーっと思った俺は、静かに近くにあった窓を開けてみた。
「んー・・・あれかな」
闇に紛れて、ひっそりと走り去る影が二つ。
本当に気配を消すのが上手いなぁ…見つけられたのは運が良かったみたい。
ちょうど、2人の近くから探し始めたから。
「あれ?ノブナガは…?」
探してる音もしないし、追っている気配もない。
上階に意識を向ければ、動かない気配がひとつ。
・・・ノブナガ?
カツンカツンとなる自分の足音が響く。
階段を上がっているのもあるだろうけど、ノブナガの警戒が俺へと向けられる。
上がってすぐに切られても不愉快だから(たとえ避けられたとしても)、俺はそのまま声を上げた。
「ノブナガーぁ?」
「なんだ。お前か」
声が聞こえて、俺はそのままノブナガに近寄っていった。
辺りを見渡してみたら、部屋の壁に大きな横穴が沢山。
「へぇ…こうやって逃げたんだ」
感心したように部屋に入って観察してれば、ノブナガが跡を追ってきて驚いたように声を上げた。
「逃げたのか!?」
「気付いてなかったのか」
やっぱり…
じゃなきゃ、いつまで経っても気配がない2人を、あんな状態で待ってないよなぁ…
だんっとノブナガに胸倉を掴まれて、壁に押しつけられる。痛い。
むすっとして、ノブナガを睨み上げる。
「何すんの」
「逃げるのを見たのか」
「遠くに走っていく二つの影を」
正直に告げながら俺の首下に押し当てられていた手を軽く叩けば、ノブナガは舌打ちをしながらその手を退けてくれる。
なんでばらしたのか…なんて。
どちらの敵にもなれないから…かな。
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