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Long 『HUNTER×HUNTER』
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あいつは気付いていない。

自分がさっきまで居たあの世界が、作り物だって事に。

元から無い世界に、行けるはずが無い。
あれは、あのマンガを模して俺が作った、全く別の世界。

かと言っても、俺の仕事はほぼ間違いなくて、あの中の人が違う動きをしたのは、俺にとっても予想外。

そして、あんな簡単に世界から切り離された例も、滅多にない。

こいつは、何者だ?










「俺を、帰らせてくれ」

黙り込んでしまったそいつに、俺はぎゅっと手を握って、頼んだ。
顔が見れなくて、正座のまま俯いていたから、見えるのは自分の手と足と沢山の落ち葉だけ。

「帰って、どうする。あの世界での自分を認められないのなら、また戻ってくるだけだ」

冷静さを失わず、どこまでも響くような、澄んだ声が聞こえる。
俺は握りしめていた手を、更に強く握った。

「なら、どうしたらいい?…あっちの世界に留まるには、どうしたらいい」

「あっちでの自分を嫌わなければいい。簡単だろう」

俺の声が震えてるのは、何でだろう。

そんなにも、あの自分が嫌なのか?
そんなにも、この世界が嫌なのか?
そんなにも…あいつらに会いたいのか…?

でも、簡単じゃない。
記憶が消えていって、誰かの記憶に支配される恐怖は、あまりにも大きなものだ。

それまでの自分が消えて、自分の身代わりに取って代わられてしまいそうな、どうしようもない恐怖…

「!?記憶に、異常が起きたのか!?」

「?ああ。段々、こっちの世界での俺の記憶が消えていって、あっちの世界で暮らしていた誰かの記憶で塗り替えられていた」

「そんな例は今まで一度も無かった」

・・・どういう、事だ?
俺の記憶は、どうなっている?

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