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Long 『HUNTER×HUNTER』
13
「…?」

目を開けたら真っ白な世界が広がっていた。
少しずつ働き始める脳で、現状を確認してみる。

真っ白な天井。
 タイルのように、四角が沢山。
真っ白なカーテン。
 無風だから、揺れずにある。
真っ白なベッド。
 俺はその上に寝ていた。

俺の記憶が正しければ、ここは病院みたいに見える。
確認をしようと起き上がろうとしたら、体中がやけに硬い。

北極にでも居るみたいに、体が軋む。
北極など、言ったこと内から解らないけどな。

「何なんだ…?」

微かに枯れてる声も、軋む体も、寝ていた所為だろうと思いこんでおこう。
ぐっと力を込めて、やっとの思いで立ち上がれば、かしゃんっと音を立てるそれ。
俺の腕から伸びている管は、棒状のそれに繋がっていて…つまり、俺は点滴をされていたらしい。

「邪魔…」

それを腕から引き抜けば、なんとか動きやすくなってきた体で、部屋から出た。
部屋から出てみても、明らかに病棟と言った雰囲気で、ため息が出た。

と、急に俺に走り寄ってくる看護婦。
その顔は驚愕に染まっている。

なんだ?
俺は近頃、人を驚かせてばかりだな…

「小波さん!気が付いたんですね!?」

「は?」

俺は訳が分からなくて、ぽかんとしていたら、俺をさっきの部屋に連れ戻す看護婦。

不思議に思っている間にベッドに座らせられて、看護婦はナースコールで医者を呼ぶ。

その後、軽い検査を受けたけど、体に特に以上は無し。
なんなんだ?

「いいかい?信じられないかもしれないが、良く聞いてくれ」

そう言って話し出す医者。

俺はあの日…
帰り道で急に倒れて、救急車で病院に運び込まれた。

しかし、どんなに検査をしても体に異常は見つからず、ただ眠っているだけのような状態だったらしい。

そのまま半年以上経って、さっき、俺が目を覚ました…と。

「まさかぁ」

微笑混じりに、俺はそう答える。

だって、俺はあっちの世界に行っていた。
天空闘技場で戦っていたし、その後だって、ハンター試験を受けた。
キルアの家にも行ったし、また天空闘技場にも行った。

そして、俺は記憶に違和感を感じていたんだ。
その後、ヒソカと話していて・・・

「御家族にも、親戚にも、連絡が取れなくてね…困っていたんだよ」
「先生っ!」

そんな会話を聞いて、俺の体は本能的に昔の姿を取り戻した。
にっこりと笑って、俺は話し出す。

「大丈夫ですよ。入院費位、自分で払えますから」

言いながら辺りを見渡して、近くにあったメモ帳に手を伸ばしたら、看護婦の胸ポケットにささっていたペンを抜いて、さらさらと文字を書き連ねる。

はい、とそれを差し出せば、驚いた顔の2人。
そのあと、検査をと煩い2人を追い出して、俺は独り部屋に残った。

なんで、俺はこっちの世界に戻された?
それとも、あれは全て夢で、俺は本当に半年寝てただけなのか?

ため息がついて出て、俺は窓まで歩いていった。
天空闘技場からの景色とは全然違っていて、暢気に車椅子やらに乗っている患者や看護婦の群れ。

あれ?
なら、何故、俺は木々に纏われた念が見える?

ばんっと音がしそうな位に、強く窓に手を当てた。
ぴしっと言う音は聞かなかった事にしておく。

凝を使って、真剣に見てみる。
全てでは無いが、念が沢山のものに纏わりついている。

そうだ。
あいつを呼べば全てが解るじゃないか。

「…って、俺あいつの名前知らねーよ…」

名を叫ぼうとため込んだ息が、ため息となって口から出ていった。
あいつとの手がかりは、あの時のぶよぶよの場所しかない。
俺は部屋中を探し回って、あの日に着ていた服を身に纏った。

ただの制服なんだけど、半年も着ていないと、どこか違和感を感じる。
・・・あれ?俺があっちで着ていた服は、どうなったんだろう?

普通に出ていったら病院関係者に止められるだろうから、俺は窓から飛び降りた。
念も身体能力も衰えてなかったみたいで、無事にすたんっと着地できた。ちなみに、5階から。

偶然その姿を見てしまった人は、顎が外れそうな位に口をあんぐりと開けていた。
えへっ☆なんて笑って誤魔化して、俺は騒ぎになる前に走り去った。

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