Long 『HUNTER×HUNTER』
12
どの位そうしていただろうか。
落ち着いてきた俺は、荷物を纏める事にした。
鞄に詰めたり、無限鞄に入れたり…
部屋は最初の時のように、俺の物など何もない状態にする。
必要な物だけを詰めた大きめの鞄を持って、扉に手を掛けながら考える。
これから、どうしようか。
何処に行けばいい?
何をしたらいい?
「どうするかなぁ…」
鞄を担いで、一人で歩く。
暇だし、炎狼を帰さない方が良かったかも…なんて思っていた時。
油断していた。
何で気付かなかったかな…
偶然なのかどうか解らないけど、ヒソカが壁に背を預けてこちらを見ている。
すっとすぐに視線を外して、そのまま無視していこうとしたら、目の前まで歩いてくる。
「そんな大荷物持って、どこに行くんだい?」
「さぁ?ここじゃないどこかかな?」
挑発でもしてるかのように、俺はヒソカを見上げる。
口端を上げながら言った俺が予想外だったのか、ヒソカは一瞬だけ驚いた顔を見せる。
「奇術師にとって、表情が崩れるのは致命的じゃないの?」
クスクスとバカにしたように笑いながら、俺はヒソカの横を抜けて歩き出す。
ぱしっと手を掴まれて、俺は面倒臭そうに振り返る。
ため息混じりに何?と問えば、意外と真剣なヒソカが居た。
「何か、あったの?」
ぴくっと反応してしまった自分を嘆きながら、また笑いを顔に貼り付けた。
「さぁ?いつも通りでしょ♪」
にっこりと、決して心の内を読まれないように、笑顔で受け答えする。
腕を掴む力が強くなって、俺は笑顔を引っ剥がして不快を全開に押し出す。
「手、痛いんですけどー」
「キルアもゴンも、試合があるんだってね」
体が、跳ねた。
何時?誰と?勝てる相手?
考えるな!
俺はこれ以上心を読み取られたくなくて、腕を振り払った。
引きつる頬を無理矢理引き上げる。
意思を、読み取らせるな。
不敵に、笑え。
「ふーん。まあ、ここに居れば戦うのは当たり前じゃん?」
「君は、変わったね」
どくんっ。
心臓が跳ねる。
警戒音が、鳴り響く。
「だからっ!ゴン達と離れたんだ!!ヒソカも、そう思うなら俺に構うな!」
ぐっと拳を握って、吐き捨てるように俯いて叫んでしまった俺。
おかしい。
俺はこんな風に感情を抑えきれなくなって、叫んだ事なんてなかった。
誰かの前で、こんなにボロボロ泣いたりなんて、絶対にしなかった。
ホントウに?
本当に、それは俺だったのか?
俺は八つ当たりするみたいに、きっとヒソカを睨み上げる。
どこか驚いたような、安心したようなヒソカの顔が見えて、俺はまたイライラがこみ上げてくる。
「俺は!こんな奴じゃなかったんだ!!」
自分に言い聞かせるように、相手にそう思わせるように、俺は力一杯そう言った。
けど、ヒソカは笑う。
なんで、今の言葉を聞いてそんな風に優しく笑うんだ。
「じゃあ、僕と居たら君はまた変わるのかな」
俺が疑問を告げるより先に、世界は闇に包まれた。
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