Long 『HUNTER×HUNTER』
8
「やばいぞ…すごい、ヤバイ」
でっかい窓から外を見おろしてみる。
今日、何かを思い出しかけた。
けど、違う記憶にすり替わった。
あれ?何で、そんな事思ってるんだ?
俺は、確かにここにいた。
けど、違う世界から来た?
じゃあ…なんなんだ、これは。
この世界に居た記憶が、ある。
あちらの世界で見ていた、この世界の記憶が消え始めている。
「俺は…どこで生きていた?」
俺の過去は、何処にある…?
思考を振り払うように点けたテレビ。
その中で腕が吹っ飛んだヒソカ…
その時にどうやったのかは解らないけど、一瞬右手が念で覆われていた(ように見えた)。
つまり…何?
両腕、パフォーマンスの為に、あげちゃったの…?
気が付いたら俺は部屋を飛び出していた。
女の人が、ヒソカの部屋から出てきた。
あの雰囲気からして、あの人も強いんだろうな…
あの人が出ていくのを見て、俺は壁に背をやりながら、煩い心臓を服ごと鷲づかみにするようにしていた。
なんだ、なんでだ?
ヒソカが怪我した位で、なんでこんなに…ざわつく。
「ヒソカ…?」
しばらくして、ヒソカの部屋に入る。
風呂上がりなのか、下着だけを纏って、髪を拭いているヒソカ。
「腕…」
なんで、元通り?
テレビでのはトリックだろうと思えたけど、なんで、今のは…
「おや、ユウキ…どうしたんだい?」
振り返ったヒソカに、俺は返答できなかった。
自分でもなんでか、なんて答えられない。
誤魔化すように、歩み寄って、意図を読み取らせないように笑顔を貼り付ける。
「別に?あんな試合をした後に、よく女を部屋に呼べるな」
馬鹿にしたように、鼻で笑ってベッドに腰を下ろす。
何をしてるんだ、俺は。
用が無くなったんだ。
もう、帰れば良いのに…
「見てたんだ…」
「さっき、部屋から出てくる所をね」
ヒソカが見れない俺は、ヒソカに背を向けてベッドに座ったまま話し続ける。
不意に、ベッドの反対側に体重が掛かったのを感じる。
「心配して、来てくれたのかい?」
「…さあ、ね」
今までとは変わったヒソカの声に、俺は盛大にため息を吐いて、仕方が無く振り返る。
「ヒソカは、死にたいの?」
純粋なる、疑問だ。
あんな戦い方は、自分の命を亡くしたいような馬鹿じゃなければ、普通はしないだろう?
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