Long 『HUNTER×HUNTER』
12
どこだ、ここ…
薄暗いけれど、この内装は飛行船の一室のようだ。
あの後、ヒソカんとこ戻ったっけ…?
そんで、なんで俺は独りで寝てんだ?
ヒソカ、手を出さなかったのか…少し、見直してやろう。
「…っ?」
起き上がろうと身を起こそうとするも、体が思うように動かずに、ぼふんと枕に顔が沈んだ。
もう一度体を動かそうとして、やっと今の俺の状況を理解した。
手足は紐のような物で縛られていて、うまく動かせない。
そして何故か体に力が入らない上に、妙に頭がくらくらする。
「ああ。起きましたか?」
聞き覚えのあるような気がする声に…うさんくさい笑い声。
体を捩らせて声のする方を見る…アタリ。あいつが居た。
「あら。朝食はお済みになったのかしら?」
「ええ。これから、少し早い夕食でも頂こうかと思って」
ね、と微笑んだ瞬間。
あいつは今までの雰囲気とは一転して、嫌な笑いを浮かべながらスルリと上着を脱ぎ捨てる。
「な、んでっ」
いくら念を出そうにも、炎の欠片も現せやしない。
力を込めて紐を引きちぎろうにも、ギリギリと締め付けられるだけ…おかしい。
それに気付いたらしいあいつは、手首の紐に触れながらニヤリと口角を上げた。
「俺の念縄…絶効果があるんだ」
スッと手を振りかざしたそいつは、全力で俺の腹に叩き落とした。
念を纏う事が出来ないから、そこへは尋常じゃない程の痛みが伴う。
「っが…はっ・・・ゲホッ」
口から血が出てきて、無駄に綺麗なシーツに赤いシミをつくった。
おかしい。
あいつは念が使えるのに、何故これ位しかダメージが無いのか。
縄…
変化系?具現化、かも。
あれ、まてよ?
強制絶なら、仮面の維持コストも消えているはず。
にも関わらず、仮面は顔についたままで、俺の姿も女のまま…
微量の念なら、使えるのだろうか?
仮面への念を止めれば、ぽとりと仮面は顔から取れた。
それに伴って、俺の体も男の物に戻り、服もいつものになる。
けれど、腕や足も多少大きくなる訳で、ちょっと苦しい…
一瞬ひるんだあいつを鼻で笑い、睨み上げる。
「残念。俺は男だ」
勝手に勘違いして怒ったあいつは、力任せに俺を殴った。
頬に直撃したそれは、口内を切って血が溢れる。
仮面が女である条件だと勘違いしたあいつは、ぐりぐりと顔に押しつけてくる。
しかしそれに俺が念を送り込まない限り、俺の姿は変わらない。
それに舌打ちしたそいつに、俺は再び笑ってやった。
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