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Long 『HUNTER×HUNTER』

暗い街並みを進むと、俺の荷物がまだ出しっぱなしで、ぱっと見ちょっとしたゴミ山のようだ。
それらに苦笑しながらとりあえず適当に引っ掴むと、中に置いてすぐにクラピカの部屋に向かった。

運良く、というか何というか…
まだ少しだけ辛そうな顔をしたクラピカを残して、他に人は居なかった。

「今、いい?」

「…ああ」

許可を取ると、後ろ手に扉を閉めながら、適当にそこらに腰を下ろした。

話しをどう切り出すか、考えながら帰ってきたとは言え、そう簡単に言い出せるもんでもない。
チラ、とクラピカの顔を覗き見れば、やっぱりまだ少し具合が悪そうだ。

「あの、俺!」

意を決して声を発すれば、クラピカがじっとこちらを見つめてきた。
心苦しさや、後ろめたさがつきまとうけれど…言ってしまおう。

「俺は、クロロを…幻影旅団の団長を、助けたい。クラピカにも、人殺しをして欲しくない」

ピクリと反応したクラピカを見て、覚悟を決めた。

嫌われても…いい。
ただ、クラピカには誰かを殺すなんて、もうして欲しくない。

どう説明したらいいかなんて、俺には解らない。
だから、経験した事を述べるしかないのだ。

「俺、昔…人を殺してたんだ。何も思わずに、自分が恐い事から逃れる為に…よく知りもしない人を、数え切れない程殺した」

見開かれたクラピカの目を見て、俺は引きつる頬を無理矢理笑わせた。
今の俺の顔は、随分と酷いことだろう。

何かを話そうとしたクラピカを見て、再び恐怖が沸き上がりそうになって、それを遮って続けた。

「けど、こっちに来て、ハンター試験でゴン達に会った。眩しくて、羨ましくて…傍に、居たいと思った」

ゴン達の事を思い浮かべると、つい頬が緩んでしまった。
それはクラピカも同じ様で、同意を示して微笑んでいる。

「そんな綺麗で眩しい人の中に、クラピカも入ってるんだ。俺みたいに闇に染まる前に…」

いつの間にか俯いていた所為で、見えなかったクラピカの顔が、随分と近くにあった。

頭の中は今話してる事とかで一杯になっていて、どうやらクラピカが移動した事に気が付けなかったらしい。
がっしりと両腕を掴まれて、真剣な瞳が突き刺さる。

「ユウキ!!」

「復讐なんて…っ!血で血を洗うような事、もう・・・するな」

目から流れた物は、きっとな涙じゃない。
涙じゃ、ない。

けれど、俺の目から出たそれを見たクラピカは、一瞬驚いて、止まってしまった。

「俺の為に、死んだ人が居た」

ポツリ、と静寂の中にその言葉を投下した。
俺が勝手に泣いた所為で、クラピカが黙り込んでいたから、今の言葉に目があった。

「俺を、地獄から救い出してくれたその人は、その所為で何発も撃たれて死んだんだ…」

話し出そうとするクラピカの口を解放されたばかりの両手で押さえて、首を振った。
瞬きをした所為で、目に溜まっていた最後の雫が落ちる。

俺は力なく微笑んで、また続けた。
でも、話し、上手く纏められないや…

「誰かを殺すって事は、自分が殺される覚悟と、自分の大事な人が殺される覚悟を決めるって事で・・・上手く言えてないけど、クラピカは、そんな覚悟、決めなくて良い」

また目尻が濡れてきて、俺は無理矢理笑って立ち上がった。
これ以上、意味の分からない事を勝手に言い続けるような迷惑行為、続けたくない。

けれど、手を掴まれて止められてしまった。
振り返ったら、クラピカがこっちを見ていて、目を逸らしてしまった。

「ゴンにも言ったが…先ずは、仲間の眼を先決にする事にした」

その言葉に、一瞬思考が追い付かなかった。
え、え…?

つまり、えっと…
一応だけど、少なくとも暫くは…旅団を、諦めるって意味にとっても、いい…のか?

「いい!それ、良い!!」

俺の目からはもう、何も出てこなかった。

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