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Long 『HUNTER×HUNTER』

会場に戻った頃には始まってしまっていたオークションに、席に着いてない俺は一瞬だけど注目されてしまった。
小さく苦笑を携えながら、俺はゴン達が居る席を探す。

ふと、キルアのふわ髪と、ゴンのとんがり頭が視界の端に映った。そして、その隣にはゼパイルさんらしき後頭部。

俺はいそいそと其処に向かうと、ゴン達が取ってくれていたらしい、空席に腰を下ろした。

「ごめん。席、ありがとな」

「いいけど…」

ゴンは俺がフィン達になんの用だったのか聞きたいらしく、そわそわと目を泳がせていた。
ゴンにしては、随分と気を利かせてくれているらしい。

「アイツ等に何の用だったんだよ」

ゴンの気遣いさえも、キルアによって打ち消されてしまったが。
否、良いんだけどね…?
ゴンももう、興味に負けたみたいだ。

「んー…クラピカ、旅団も、それ以外も…誰も、殺さないといいなって」

2人は顔を見合わせて、首を傾げた。
話しをすり替えられたのかと思ったらしい2人が再びこっちを向いた時に、俺は口元に指を立てて前を指差した。

「ほら。運ばれてきたよ」

ステージの上で歩いている人の手には、ゴン宅で見たゲーム機…ジョイステーション。
それを台の上に置いたその人は、そそくさと裏へと戻っていった。

説明を適当に聞いていたら、ふと現れた大男が特大ハンマーでジョイステーションを殴った。
バラバラになってしまった台とは裏腹に、ジョイステーションは無傷で床に落ちている。
・・・念、だ。

どっかのおっさんが出品したらしいそれは、瞬く間に金額を上げていった。
ジンとの関係がなかった場合、あんなんにそんな金かけるなんてアホだと思ってるかも知れないな。

なんて思っていたら、ゴンが恐ろしい事をしでかしました。
それによって、120億が240億になってしまった。

「ぷっ…ふふ、くっ」

俺は笑いを堪えるのに必死だった。
怒ってるゼパイルさんとか、同じ事をしそうだったみたいなキルアにもリアクションを返せない程に。



オークションが終わり、バッテラに会いに行くというゴン達と別れ、俺はフィン達を探していた。
後で、とは言ったものの…場所の指定をすっかり忘れていたのだ。

円で探りながら歩いていたら、何故か2人の近くにゴンとキルア。
また話しかけたのかとか、だったら一緒に居れば良かったかな、とか思いながらも、4人の距離には違和感があった。

ゴン達の近くにはもう何人かの気配もあって、そこから少し離れた所にフィンクス達が居るように感じる。
まあ、考えたところで意味を為さないだろうから、俺はそのまま2人に歩み寄った。

2人に並んで耳を澄ませてみたら、ゴン達の方からおっさん達の声と、ゴン達の声がだだ漏れだった。
それを聞いていたと言うことは、フィンとフェイの目的はG.I?

「審査か…どうする?」

「決まてるね」

「盗むんだ」

俺が声を発したら、少し警戒した2人。
俺が居ることには十中八九、気付いていただろう。
なら、俺が盗みの阻止をする事への警戒だろうか?

「邪魔する気はないよ。・・・それより、クロ番〜」

G.Iの1個や2個盗まれても、俺にはどうでも良いこと。関係ない。
だって、ゴンやキルアなら、募集人数が減ったとしても大丈夫だろう。

あの2人はあまりにも大きな才能を秘めている。
あのおっさんが言っていたとおり、ゴンとキルアなら4日もあれば、別人にさえ成り得る程の素質がある。

俺は2人の腕を鷲掴むと、手頃そうなソファに無理やり座らせた。
俺もすぐに向かいの席に腰を下ろすと、2人が口を開くより先に、単刀直入に消えゆく思物の説明をした。

本当のことを言わせて貰えば、そう簡単に能力の事なんて人に言いたくない。
何故ならその行為は、自ら弱点を曝すようなものだからだ。

けれど、今はクロロの連絡先が最優先。
諦めろ、俺。

大丈夫だ。
これ以外の能力で旅団が知っているの(炎狼)はもう別のものになってしまった。…寂しい。じゃなかった!!

「…まあ、こんな感じ。ハイ、クロロの連絡先ちょーだい」

片手を2人に向かって突き出したら、以外にもあっさり何かをよこした。
手を引っ込めて、手中にある物を確認したら…誰かの携帯電話だった。

「かけてみろよ」

フィンクスに促されるままに、携帯を操作して目的の人物を探す。
程なくして現れたそれに、少し躊躇ったが、すぐに通話ボタンを押した。

暫くの電子音の後、電源を切っていると言うご報告。
団員との連絡を絶つためにうった何かしらの手段かと思い、自分の携帯を取り出して同じ番号にかけた。
しかしそれも結局、まったく同じ結果だ。

「繋がらない」

「早くするよ」

フェイタンに催促されて、俺はフィンクスに携帯を返した。
立ち去ろうとする2人を止めもせず、その背に力無く礼を述べた。

1人その場に残された俺は、ソファに深く背を預け、やけに重い腕を持ち上げた。
少ない電話帳を眺めながら、ある人へと電話をかける。

「もしもし」

「…知ってたの?」

ヒソカの携帯にも俺の番号は登録されているから、わざわざ名乗りもせずに話し出す。

「なんの事だい?」

「団長が電話に出ないこと」

知らない、と告げたヒソカの声だけじゃ、どうなのか判断しかねる。
もともと、嘘や隠蔽が上手いしなぁ…

「・・・あいたい」

そのままいくらか話していたら、ふいに口から脱走してしまったその言葉。
一瞬驚いたらしいヒソカは、次の瞬間には嬉しそうな声音になった。

「随分、嬉しい事を言ってくれるね」

出てしまった言葉を取り消すのはあまりに難しいだろうから、俺は誤魔化す方を選んだ。
100%の嘘でもなければ、100%の真実でもない。

「クロロにだよ」

電話越しに息を詰めたのが分かって、つい吹き出してしまった。
ふと伝わってくる、拗ねたような気配…ヒソカはたまに可愛い。

「ヒソカにも、な」

最後にそう告げると、俺は電話を切った。充電完了。
まだまだ、頑張れるよ。

ぐーっと大きく伸びをすると、そのままの勢いで立ち上がった。
携帯をポケットに押し込んで会場を後にした。

少しだけ軽くなった足が向かう先は・・・クラピカだ。

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あきゅろす。
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