Long 『HUNTER×HUNTER』
2
あの後聞いた話だが、パクは…みんなに記憶を見せる弾を撃ち込んで、死んだらしい。
そうまでしても守りたい何かがあったんだと思う。
けれど…そうかも知れないけれど。
せめて俺がついて行けば、俺がみんなに話せば、パクは死なずに済んだんだ。
でもそれは結局、ヒソカの手を振り払ってしまう事でもあったし、クラピカ達を少なからず裏切ってしまう事でもあった。
でも結局、クロロを助けようとしているのは、クラピカへの裏切り行為かも知れない。
盛大なため息が口から出てしまって、ヒソカにどうしたのなんて聞かれてしまった。
「うだうだ考えてても、ろくな方にいかないな、と思って」
「ふぅん」
ヒソカはあまり興味ないらしい。
ぐいっと顎を引かれて、上を向かせられた。首痛い。
ヒソカに後ろから抱えられるようにして座っていた俺は、ヒソカのその行為によってヒソカが視界いっぱいに広がった。
「痛い。なに?」
「それよりも、ボクは君の念が気になるな」
ご機嫌なヒソカに、俺は口端が引きつった。
消えゆく思物の件から、妙に俺の念に拘ってくるのだ。
けど、なんか言いたくない。
だって…俺の念って、ヒソカのみたいに応用も利かなければ、使い道にバリエーションがある訳でもないのだ。
なんか、悔しいじゃないか。
どんな事もできるっぽい事が解って、犬とか欲しかった俺が思いつきで創り出してしまったのが炎狼。
炎を使うのだって、焼かれてなんとなく創った物だし。
無限の鞄だって、この世界に家がない俺には丁度いいと思っての物だ。
そして消えゆく思物…
リスクが多すぎて、そう簡単に使いたくない。
「ヒソカって凄いね」
じっとヒソカを見つめて言ってみたら、ヒソカは急なその言葉に不思議そうにしていた。
あの能力、まだあまり見ていないけれど…
やられたら、結構いやだよな。
ヒソカの攻撃を受けずに、凝での注意も怠らない…
最低限、それが出来ていなければ打ち破れないだろう。
・・・って!
俺も念についてしかここのところ考えてねー!!
べしっとヒソカの顔を叩いて身体を離すと、がしっとヒソカの襟元を鷲掴んで顔を近づけた。
「クロロ!!団長に連絡とって!」
言った瞬間に少しつまらなそうな顔になってしまったヒソカ。
クロロはまだ、大丈夫だって言ったのに。
消えゆく思物の説明だってしたのに。
結局連絡を取ってくれなかったヒソカ。
俺はヒソカに適当に文句を言って、ヒソカの元を離れた。
そのまま適当に歩きながらゴン達に電話を掛けた。
しばらくの電気音の後、聞き慣れた元気な声が耳に届く。
「ゴン!久しぶり」
「ユウキ!?」
「うん。・・・今どこに居る?俺、行ってもいい?」
まだ納得してないらしかったゴンの言葉を遮って、俺はそう告げた。
しぶしぶっぽかったけれど、居場所を教えてくれたのは行ってもいいからだと思う。
俺はゴンから聞いた辺りへと足を向けながら、再び念の事を考えていた。
せめて、必殺技みたいな…
こう、それを食らわせれば致命的とか、そういうのは欲しいよなぁ…
そして、今ある能力からも応用が利きそうな…
やっぱり、戦闘向きなのは炎の力と炎狼のみだしなぁ…
そこらへんしか改良の余地はないって事だ。
応用…
例えば、炎狼を出しつつ、俺の力に追加する…と、いうような。
む?なんか、理論おかしいぞ…
どうしたもんか、と首を捻っていた時。
ゴンが言っていたものとよく似た建物が見えてきて、そこに入る事にした。
「ゴン?キルア?居る?」
廃屋を思わせる、どこか汚れた建物で、どうしても辺りを見渡してしまう。
結構汚れてるな、なんて思っていたら、ひょこっとゴンが少し先の扉から顔を出した。
その後ろからもぴょこんっとキルアが出てきて、ゴンが口の前に人差し指を立てた。
静かに、と言う意味だろうと思って、俺は黙って其処に向かう。
部屋の中を覗いてみたら、寝ているクラピカと、看病しているらしいレオリオとセンリツさん。
そして、誰か解らないけれど、敵ではなさそうな男の人が1人。
「クラピカ、どうかしたの?」
「熱出ちゃったんだ」
熱…
ゴンの言葉を聞いて、俺はそっとクラピカの元へと歩み寄ってみた。
すっと額に手を伸ばしたら、タオルの上からでも解る熱い体温。
結構、まずそうだ…
消えゆく思物で消す事も考えたけれど、熱を消すとしたら体温全てを奪ってしまうからムリだ。
体温が0になった場合、人間は死んでしまうだろうし…
苦しそうなクラピカを見て、俺は無意識に謝っていた。
そして、その理由を自分でも考える。
そうか、たぶん…
クロロをたすけたい。ごめん。だな…
それ以外にも、謝りたい事が後を絶たないよ…
でも、後悔はしないよ。きっと。
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