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Long 『HUNTER×HUNTER』

ホテルへの帰り道。
遠くに見つけてしまった愛しい後ろ姿。

普通の姿だし、こんなにも遠くから見ても解る位にも好きなんだと再認識させられてしまう。

神、なんて存在を意識した事なんてきっと今までなかっただろうけれども、今なら感謝しても良い。

8割以上は感謝しているけれども、贅沢を言えば、もう少し後にして欲しかった。
それが残りの2割以下。

俺は大きく深呼吸をして、地面を蹴って走り出した。

「ヒソカ!!」

聞こえているだろうに、振り向かずに行ってしまおうとする背中に、再び声を掛ける。
けれども、何回呼んでも振り返るのはどうでも良い民間人ばかりで、それさえもおそらくは野次馬精神だろう。

俺は恥ずかしくても良いから、言ってしまう事にした。

「ヒソカ!!ごめん!好きだ!!」

周りの野次馬が煩くて、視線が痛くて、顔から火が出そうだった。
野次も口笛も、突き刺さる程の大量の視線も、痛い。

ヒソカの足が止まったのが見えて、俺は一気に追い付こうと人混みを縫う。
飛び交う野次さえも、今はどうでも良い。

「信じられなくて、ごめん!ずっと…」

ヒソカの腕を掴んだのは良いけれど、顔を見る勇気が出なくて…
背中に額を押し当てて、小さく続けた。

「好きだったよ…」

こんなに簡単に出てしまえる一言を、今までなんで言えなかったんだろう…
この一言を言うだけで、こんなにも気持ちが温かくなる言葉なんて、きっと他にない。

「ずっと、言えなかったんだ。ヒソカは俺を好きじゃないって…絶対に、言えないと思って…ごめん」

自分でも何を言っているのか解らないし、言葉を纏められていないと分かっている。
けれども、言葉は止まってくれなかった。

ただ、ヒソカの誤解を解きたくて…言い続けた。
じわり、と浮かんでしまった涙が幾つか地面に落ちた時。

ヒソカが振り返って俺の顔を起こして、涙を拭ってくれた。
でも、その行為で余計に涙が流れ出てしまう。

「ごめん…ごめん。大好きだー…」

「ボクもだよ」

頬と瞼にキスをされて、漸く涙が納まってきた。
俺はこの世界に来てから、一体どのくらい泣いたのだろう?

好きだからこそ、涙が出るんだ…
本当に、厄介な感情だと思う。

それでも…

「好きだよ、ヒソカ」

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