[携帯モード] [URL送信]

桜葉学園
17 テスト返却日


「おはよー」

「おはよ」

教室に次々とクラスメートが登校してくる中、俺は机に突っ伏していた。

昨日、結局会長は帰ってこなかった。
アイツが仕事をする、なんてそんな期待は最初からしてなかったけれど。
俺達がいるのに自室へ帰るなんて、どうかしてると思う。

「おはよう、夕翔」

「あ、博」

顔を上げると、博が自分の鞄を席に置いていた。

「お疲れ。昨日、仕事手伝ったんでしょ?」

「え……あ、そっか」

いきなりで、頭がついていかなかった。

博は俺達が生徒会室にいたことを知っているらしい。
博は【黒龍】のメンバー。それを隠すつもりはないみたいだ。

「稔が部屋に来てさ。話してくれたんだ。俺のこと、もう知ってるよね?」

「…うん」

「…気を付けてたのに。知らないうちにあの情報屋にデータ奪われてた」

あの、というのはたぶん"瞬"のことだろう。
博は、困ったように笑うと口を開いた。

「…やっぱり、あの情報屋にはかなわない」

「でも、俺達のデータを奪ったのは博だよな?」

「…そうだよ。瑛に頼まれて」

つまり、俺達の正体を知っているのは瑛先輩と博ということだ。情報屋がこんなに近くにいたなんて。

「…別に俺が情報屋だから仲が良いふりをしてたわけじゃないよ?」

「…うん」

わかってる。
たぶん、博は最初から俺達のことを疑っていたわけじゃない。瑛先輩から何か言われて気づいたのだろう。

「だからさ、これからも今まで通りでいい?」

「いいよ。そんな気にしてないから」

正直、クラスの友達は博くらいしかいない。
他の奴らは、俺に一線をおいて話しかけてこないからだ。
俺を気に入らないのか、それとも生徒会に目を付けられたくないのか、理由は色々あると思うけど。

「良かった。嫌われたらどうしようかと…」

博は、少し安心したようだ。

「嫌うわけないだろ。…でも、密かに俺達を探ってたのは腹立つ!一発殴って良いか!?」

「え、無理だよ!?俺、あくまで情報屋だから。喧嘩なんてできないよ!」

あ、そうなんだ。
情報屋は基本、表にでてこないから当たり前か。"瞬"が異例なだけだ。

「そっか。じゃ、いざとなったら博を人質にすればいいんだね」

「うわ、和!」

いきなり和が話に入ってきた。博にニコリと笑いかけている。

「和、怖いこと言わないで」

「んー冗談だよっ」

博は冷や汗を掻いていた。
博からすれば、敵チームの総長と副総長に囲まれている状況だしな。

「取りあえず、学校では敵とかそんなの無し!あ、でも情報教えて」

和は手を合わせて博に頼む。

「情報?」

「新しいチームのね」

あぁ、なるほど。

「…そっちも得られた情報を教えてくれるなら良いけど」

博はそう言って、俺に視線を向ける。

…お互いに情報を与えるってことか。

【白蓮】にとっても【黒龍】にとっても、新しいチームの情報はできる限り集めたい。

だから、敵チームでもそこは協力出来るはずだ。

「うん、教える」

2人の視線が向けられる中、俺は頷いた。


…決まりだ。



[*前へ][次へ#]

17/34ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!