桜葉学園
15
「お前はどうするんだ?」
「…えっ」
ふいに会長が俺に問う。
夏休み、帰省するかどうか。そんなこと全然考えていなかった。
…夏休みに帰省するのが普通だろう。わざわざ寮に残る理由なんてないし。帰省したら、夏休み中は毎日溜まり場に遊びに行ける。
「たぶん、帰る」
「…そうか」
会長は、表情一つも変えずに頷いた。再び、プリントに目を通し始める。
…生徒会はどうなんだろう。家に帰るのかな。
今思えば、俺は会長達の家を知らない。それは別に当然のことだろうけれど。
和がいうには、瑛先輩は俺達の家がどこなのか知っているみたいだった。
生徒会の特権というやつで、俺達の家を調べたんだろうけど、ずるいような気がする。
会長達の家は推測だけど、前に【黒龍】の溜まり場だった場所の近くだと思う。
もしそうなら、けっこう家が近いかもしれない。
「会長は帰んの?」
「帰らねぇ」
即答。
どうやら会長は家に帰りたくないようだ。
「ふ〜ん」
「…何だよ」
「…別に。会長の家ってどんな感じなのか気になっただけ」
寮部屋が広いため、会長の家も広いイメージがある。豪邸とかだったりして。
そもそもこの学園は金持ち学校。
俺達みたいに、狭い一軒家なんてありえないのかもしれない。
「…家デカそう」
「普通だ」
「会長の普通は俺にとって大きいの!」
だって、この学園が会長達のいう普通の大きさだろ。
うわー、ありえない。
「…何沈んでんだ」
「…金持ちはいいなって」
会長は、軽く溜め息をついて俺にプリントを渡した。
寮に残る奴って結構いるんだな、って…。
「…会長、これ、ちゃんと目通してるよな?」
「知らねぇ」
あぁ、やっぱり。
だってなんだよ、これ。
寮に残る理由が、めんどくさいからとか嫌だとか。
それにこれは明らかに親衛隊。生徒会様方が残ると聞いたからだって。
「…駿貴、ちゃんとやってるよね?」
俺の言葉を聞いた瑛先輩が、いつの間にか目の前にいた。
怒っている。
「うるせーな。面倒なんだよ」
「だからって、こんな理由許しちゃ駄目でしょ」
会長のせいで、また仕事やり直しなんて嫌なんだけどな。
瑛先輩と会長の言い争いを耳に流しながら俺はそう思った。
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