[携帯モード] [URL送信]

桜葉学園
09 本名


「本名」

「は?」

いきなり、何を言い出すかと思えば。

「本名知りたい」

全員が動きを止めて、コウに視線を向ける。

【白蓮】のメンバーは、あだ名で呼び合うためお互いの本名を知らない。

「今までは別に知らなくてよかったけど…」

「確かに。俺達が本名を知らなくて、敵が知ってるのもおかしい」

セイも頷いて同意する。

…学園は本名で通っている。

つまり、俺達の情報を一番知っているのは瑛先輩ということになる。

「少なくとも、"氷架"は総長の本名知ってるんだよね。ずるいっ!」

コウの言うことも分かる。

俺達は、仲が良いが日常生活では関わりがない。
だから今まで本名の話はでてこなかった。知らなくても良かったんだ。

俺と和は別だけど。

「そういえば、コウとハヤセも同じ学校なんだから…」

「うん。僕はハヤセの本名知ってる」

「そっか…」

「名前だけでもいいから、ね?」

うーん。
どうしよう。
敵にバレた今、味方に本名を隠す必要もない。

「知りたい?」

俺は周りを見渡す。
"瞬"と和以外はみな頷いた。

「俺は名前知ってるし」

「えっ!?」

"瞬"は俺と和を横目でみながら暴露した。

…教えた覚えがないんだけど。

「ほら、前総長に呼ばれてたじゃん。名前」

「あー…、そっか。"瞬"もあの場にいたからな」

前総長の時。
俺達はまだまだ未熟で、通り名なんて存在していなかった。

幹部しか入れないこの場所に、前総長と昔からの知り合いだったのもあって、よく遊びに来ていた。

それは俺と和だけではなくて、前情報屋と仲が良かった"瞬"もその場にいたんだ。

「…前総長に気に入られてたもんな。俺達はいつも下の階にいたし」

ハヤセはコーラを飲み干し、ソファーにもたれ掛かる。

…その頃、ハヤセ達とは顔見知り程度だったっけ。

「じゃあ…お互いに自己紹介する?」

「…変な感じだね」

今まで黙っていた和は、俺に顔を向けて言った。

中学の頃、毎日のように会っていたのに自己紹介なんて今更すぎる。

…今まで、本名を知らなくても、お互いに信頼しあっていたんだ。

「でも、名前知ってどうすんの」

呼び名を変えるわけにもいかないだろうし。

「…ただの自己満!」

コウはニコリと笑った。

「名前、言いたくない人は?」

みんな何も言わない。
別にいいみたいだ。

「じゃあ…」

俺は口を開いた。




[*前へ][次へ#]

9/34ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!