桜葉学園
05
…部屋は静寂に包まれていた。
「バレたって?」
初めに、ハヤセが口を開く。
「総長がチームを知っていると口を滑らせ、疑われた。何故か"紅"が学園にいて、アイツらに溜まり場を教えて…副総長と"氷架"が話して、"瞬"の言ってたデータを使われてバレた、と」
…はい、簡単に言うとその通りです。
チラリとハヤセを見ると、睨まれた。
「原因は総長かよ。バカだろ」
「う…」
「チームを知ってる発言をしなかったら、バレなかっただろ」
「そ、そうだけど」
口が滑ったのだから仕方ないだろ。
「"鷹"も油断しすぎだよ。相手はあの"氷架"だったんだよ?」
「ごめん…」
コウは静かに和を注意した。和は申し訳なさそうに謝った。
つまり、だ。
"瞬"だけではなく、俺や和にも原因はあるわけで。
「…大変なことになったな」
問題は、これからどうするかだ。溜まり場もあの広場の近くだと知られた。俺と和の正体も瑛先輩にバレた。
「"氷架"は他の人には言わないと言った」
「そんなの、嘘にきまってんだろ」
和が呟いたことに、ハヤセがきっぱりと言った。
「…2人とも、学校に戻らないほうがいいよ!」
「そうだ。少なくとも、相手の副総長にバレたんだから」
コウに同意して、セイは起き上がり座り直すと眼鏡をかけ直した。
「…それに、学園が【黒龍】の溜まり場なんだったら余計に危険だ」
3人の言うとおりだ。
正体がバレてるのに敵の溜まり場に行くなんて、危険じゃないわけがない。
「…でも、俺は学園の生徒だ」
「"翼"!?」
確かに瑛先輩が黙ってくれる保証なんてない。だけど、言わないと思うんだ。それは、ただの思い込みかもしれないけれど。
それに…。
「会長…"水龍"って馬鹿だから」
「…総長」
「俺が2階から飛び降りても、疑いもしない奴だ」
「ぷっ、何それ」
俺の言葉にコウが吹き出す。
「確かに副会長と違って会長は馬鹿だよね」
和も笑いながら頷いた。
「高校中退なんてしたくないしな。学園生活は、大変だけど楽しいんだ。…だから、俺は学園に戻る」
「………」
「…桜葉さんは【黒龍】がいるのを分かった上で俺達を学園に入れた」
「桜葉さん、何考えてるんだ」
…桜葉さんの考えてることなんて分からない。
「学園には桜葉さんがいるし、そこまで大きな騒ぎにはならないよ!」
「…"鷹"」
和の言うとおり。
騒ぎにはなるなら、【黒龍】が"紅"の存在を知った時点で動きがあってもおかしくなかった。
情報を集めるために煉を人質にすることも可能だったはず。
それをしないで話し合いをしたと言うことは…。
「きっと、大丈夫」
俺達の様子をみて、幹部達はしぶしぶ頷く。
しかし、納得はいってないようだ。
「…あんまり、生徒会に関わるなよ」
ハヤセが静かに言った。
「…うん」
幹部達に心配されないように俺は笑って頷いた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!