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今はまだ






ここ最近、沖田は毎日ある団子屋に通っている。
かぶき町にある、安いがみたらし団子しか売っていない店だ。
その店で団子を一皿だけ買って、彼を待つのが日課だった。



「沖田くん、昨日ぶりー」



待ち始めて数分、待ち人がやってきた。
銀色の髪を持つその男は、迷うことなく沖田の隣に座った。
そして団子をひとつ頼むと、血色の目を柔らかく細めて沖田を見る。
沖田もまた、無邪気な笑みで応えた。


沖田がずっと待っていたのは、万事屋の主、坂田銀時。
真選組、特に土方とは相性の悪いこの男を、沖田は慕っていた。
初めは尊敬の念だと思っていたが、どうやらそれも違うらしかった。


会いたくて、傍にいたくて、触れたくて、触れられたくて。


それはつまり、恋情なのだ。



「今日もまたツケですかィ?」


「うるせーよ。仕事がねぇんだからしょうがねぇだろ」



沖田がからかうと銀時は拗ねたように顔を背ける。
子供のようなそれに、沖田はくすくすと笑ってしまった。



「笑うなっ」


「旦那があんまり可愛いんで」


「男に可愛いなんて言うんじゃねぇよ」



本格的に拗ねてしまったらしく、銀時は体ごと沖田に背を向ける。
上げた足に肘を突く形で頬杖をつき、運ばれてきた団子を頬張った。
至福を感じているのか、その顔はだらしなく緩んでいる。
沖田はその様子を、黙って見つめていた。


沖田だって男だ。
想い人が近くにいれば、キスしたいし触れたいし、それ以上のことをしたいと思う。
けれどそれ以上に、愛しい気持ちでいっぱいで。


銀時が幸せそうにしている。
その姿を見るだけで、満足してしまう。


だからといって、彼を諦めるわけではないけれど。
今はまだ、見ているだけで幸せなのだ。



「旦那」


「んー?」



そろそろ時間だ。
市中見廻りをサボってからだいぶ経つ。
土方がうるさいので、そろそろ戻らなければならない。


沖田は立ち上がり、銀時に声をかける。
団子に夢中な銀時は気のない返事を返した。
沖田に背を向けたままで、こちらを見ようともしない。
少し寂しい気分になりながら、沖田は銀時の視界に自分の団子の皿を押しやった。



「これあげまさァ。俺ァそろそろ戻らねェと土方のヤローがうるさそうなんでねィ」


「マジでか!」



キラキラと輝く瞳が沖田を見上げる。
銀時が座っているために必然的に上目遣いになる。
ドキリ、と心臓が跳ねる音がした。



「ありがとー。沖田くん大好き!!」



深い意味がないと知っていても、その言葉は沖田を喜ばせるには十分すぎた。
これから仕事に戻らなければならず下がった気分を、銀時は簡単に浮上させる。
嬉しくて、自然と笑みが浮かんだ。



「それじゃ、旦那。また」


「おー。またな」



銀時に背を向けて歩きだす。
団子を頬張りながら、銀時が小さく手を振った。



「銀さん。アンタも罪作りな男だねぇ。あんな若いの捕まえて」


「あ? んだそりゃ」



沖田がいなくなった団子屋で、そんな会話が交わされていることを、もちろん沖田が知るわけもなかった。






+end+






+++++



アンケート四位、原作設定沖銀でした。
沖銀はほのぼのを書きたくなります。
本当に山なし落ちなし意味なし(笑)
しかもアンケで書いたのに神楽ちゃん絡めてないですしね。
今度頑張る……とか言ってみる←
一万五千打、ありがとうございました!
フリーですので、じゃんじゃんもらっていってやってください!






2010.04.25.

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