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続、窓から始まる物語



高校三年の春。
それは、大学受験という大きな関門をひしひしと感じる時期で。
受験なんて適当にやっときゃいいだろ、なスタンスを崩さなかった俺にも、その圧迫感はやってきた。


まさかのオプション付きで。






【続・窓から始まる物語】






家庭教師つけることにしたから。


親からそう告げられたのが、ほんの数時間前。
なんやかんやでその日のうちに家庭教師が来ることになり、俺にしては珍しく部屋を片付けた。


そして、やってきた家庭教師は。



「ここが銀時の部屋かィ。へぇ……見事にジャンプばっかだねィ」



数ヶ月前に俺が恋して諦めた、茶髪の彼、沖田総悟その人だった。


俺の二つ上の沖田さんは、無事に三年生に進級して、家庭教師のバイトを始めたらしい。
バイトを始めて最初の生徒が俺ってわけ。


ちなみに、近藤さんがぎりぎり進級できて、土方さんはすべての講義を一番いい成績で進級したらしい。
相変わらず土方さんはすごい。
そう言ったら、沖田さんが目に見えてイラついた。
沖田さんが土方さんを嫌っているのも相変わらずみたいだった。


申し訳程度に片づけられた部屋の床に座って、沖田さんはきょろきょろと部屋を見渡した。
俺の部屋には勉強机というものはない。
だから椅子もなくて、俺たちは部屋の真ん中に置かれたテーブルを挟んで向かい合うように座っている。
まじまじと部屋を観察されて、俺はいたたまれない気分になってしまう。


なんていったって俺が好きだった、いや、今も好きな人だ。
片思いとはいえ、好きな人と二人っきりで部屋にいたら、普通パニックになるだろ。
救いは、沖田さんが俺のこと何とも思ってないってことだ。
当然ではあるけど。



「で、銀時。アンタの成績はどうなんでィ?」


「うぇ!?」



俺ばかり緊張して、ガッチガチに固まっていたら、声をかけられて変な声を出してしまった。
沖田さんが笑う。
俺は恥ずかしくてそっぽを向いた。


涼しい顔して笑ってる沖田さんにちょっとイラッときて、昨日返ってきたばかりのテストと二年の成績表を放り投げた。
テストは三年になった途端にあった、国語、数学、英語の実力テストだ。
俺は頭は全然よくない。
下から数えた方が早いくらいだ。
あえて言うなら、国語が得意で、数学は好きでも嫌いでもなくて、英語はものすごく苦手だ。
いいんだよ、俺絶対日本から出ないから。


難なくそれを受け取った沖田さんは成績表をまじまじと見て、口元を笑みの形に歪めた。
なんだか嫌な予感のする笑みだ。


と、思ったら、容赦ない言葉が俺の胸を貫いた。



「こんなんじゃ全然ダメでさァ」



ザクッという音が聞こえた気がする。
なんでだろう。
すごく胸が痛いんだけど。



「こんなレベルじゃ銀魂大学にゃ行けねェ」


「はぁ!?」



ちょ、ちょっと待った。
俺は銀魂大学なんかに行く気はない。


銀魂大学は俺の入院していた病院の近くにある、俺の家からも十分行ける距離にある大学だ。
噂ではバカな奴が多いと聞くけれど、実際はあそこの偏差値は高いのだ。
頭が悪いわけでなくて、日頃の行いが常識から外れているだけ。
俺が通う高校からすれば、銀魂大学に行けたらそれだけで尊敬の眼差しを集められる。
そんな大学に、正真正銘バカな俺が行けるはずがないんだ。


それなのに、沖田さんはそれがさも当然であるかのように、銀魂大学に行くための勉強プランを考え始める。
俺が何度行く気がないと言っても、全然聞き入れてくれなかった。



「何なんだよ。俺ァ必要以上の勉強なんざする気はねぇんだよ。沖田さんだって楽な仕事の方がいいだろ?」


「それじゃダメでィ。初めての仕事なんだから、きっちりやるべきだろィ」


「俺の頭で銀魂大学なんか行けねぇっての」



すでに諦めモードの俺に向かって、必要な参考書を書きだした沖田さんはにやりと笑う。
さっきと同じ、嫌な感じの。



「俺が行けるようにしてやりまさァ」



どきりとする俺はもうどうかしてる。






+++++






それから、猛勉強が始まった。


自他共に認めるドSな沖田さんは勉強に関してもドSで、授業はものすごいスパルタだった。
沖田さんに会えるなんて喜んでいる場合じゃなかった。
出される問題は超難関だし、一度間違えた問題を二度間違えるとお仕置きが待っている。
お仕置きの内容は……聞かないでほしい。


だけど、教え方はすごくうまい。
学校の先生なんかよりずっとわかりやすくて、沖田さんに家庭教師についてもらってから、前よりずっと成績は上がったと思う。
思うっていうか、本当に上がっていた。










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