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彼女は白百合を抱えながらセーヌ川に消えた


なんて可笑しい話なんだろう。
聖女だ救世主だと謳われた20にもならない少女が、此処では魔女だ異端者だと虐げられる。
傷つけられて痛めつけられて、
心がもうボロボロなはずなのに何故彼女は笑ってるのだろう。
冷たい牢獄の面会室で久しぶりにあった彼女は少し窶れていた。

「あら、フランシス。どうして泣いているの?」
「どうして君は笑ってるの、怖くないのかい?」
「怖い、わ…」

当たり前じゃない、と彼女は付け足した。

「けれどそれが神のお望みなら、私は全てを委ねる」
「……っ、そんな神っ!」
「フランシス怒らないで、私は今までだって神に従ってきたの。この戦争に参加できて私よかったわ」

彼女は嬉しそうに微笑み、言葉を紡いだ。

「あなたを守る為に戦えたんですもの!私、幸せだったわ。だから泣かないでフランシス。あなたが泣くことないのよ」
「…君が泣かないから、お兄さんが泣いてあげてるんだよ」
「ふふっ、そうだったの?ありがとう」

瞳からは止め処なく涙が零れる。
そうだ、彼女が泣かないから。

「私、本当に幸せだった」

最後まで笑い続ける彼女の代わりに。
最後まで彼女が信じた神を呪いながら。






(灰になる彼女を思って涙を流すのだ)






end!
仏ジャン凄く好き。



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