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遠い約束は今も有効ですか


少し硬質な金の髪も。
宝石のような碧の瞳も。
滑らかな肌も。
少し荒い口調も。

全て大好きでした。
…違う、今でも好きなまま。
大陸を越えた所に在る遠い遠い国の彼が、私を好きだと言ってくれたのは何年前だったでしょうか?
それともあれは幻で、今もその夢の延長線なのでしょうか?

『お、俺がお前を守ってやるからな!』
『ふふっ、それは頼もしいですね』
『…あんま信用してねぇだろ』
『いえいえ、そんなことないですよ』
『なら、いいけど…。俺は菊のことが好きだから守ってやるんだからな』
『え?』
『な、なんでもないっ!』

守ってやると彼は言ってくれました。
好きだと彼は言ってくれました。
それが至極嬉しくて、私は愛されているのだと思えたのです。

それさえもが。
温かく優しかったあの記憶達までもが。
例え幻だとしても、私はそれが真実なのだと語りたいのです。それほどまで愛していたのに…。
どうして今あなたは私の敵なのですか?
守ってやると言ってくれたあなたが。

(それもこれも、あの人のせいだ)




柔らかな黒い髪も。
甘そうなキャラメル色の瞳も。
色の白い肌も。
大人しい口調も。

全て大好きだった。
…違う、今でも好きだ。
小さな島国の菊に好きだと告げたのは何年前だったのか。
か弱い華奢な体を守ってやりたいと思った。
嘘偽り幻想や幻なんかじゃなく、俺は菊を愛していたから。

それなのに、どうして。
どうして、今。
菊が俺に刀を向け、俺は菊に銃を向けているのだろうか。

愛してた。
大切だった。
恋しかった。
溢れ出す、
温かい優しい思い出。

菊の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。

「…アーサーさん、私は、私は、どうしたら、いいのでしょうか…。私は、私は…、」

ぽろぽろと零れる菊の涙は止まることを知らない。
菊の少し震えている刀を握る手を見て、胸がズキンと音をたてて痛んだ。

「すまない、菊…。すまない…、」

何に対して謝っているのか分からなかった。
ただただ俺は滲んだ視界の中で謝罪を繰り返す。

そうして、手にしていた銃を落とそうとした瞬間。
後ろから抱きしめられた。
そして片手で視界を奪われた。

「大丈夫かい、アーサー」「ア、ル…?」

それはアルフレッドの声だった。
視界が奪われてるか確認は出来ないけれど。

「…アル……、俺には出来ない、俺には、無理だ…、」
「あぁ、大丈夫だよ。俺がしてあげるから、君は待っててくれるだけでいいんだぞ。何も見ないで、何も聞かないで」

くすくすとアルが笑った気配がした。
止めてくれとは言えなかった。
これが大きな戦争だということを重々承知していたから。

ごめんと小さく呟いてから銃を落として、両手で耳を塞いだ。
菊が悲痛な声で俺を呼んだ、そんな気がした。

結局。
俺は、菊を守ることも真っ正面から受けてやることも出来ず。
アルが菊に大きな傷を与えた。


それを見て見ぬふりをする


(臆病な俺は、お前の涙を拭ってやることも出来ない)






end!
WW2のお話。日本に致命傷を与えたのがイギじゃなくてメリカなのがあれだなぁって思いました。日英←米な感じです。日英同盟は切ないです…。アーサーはアルを無条件に信用してる、という妄想^^



あきゅろす。
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