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愛し合っているつもりだった
その建物は、錬鉄で出来ている。
1889年に建設され今はシンボルとなっている。
高さは324m。
展望台は三つあり、1番高い展望台での高さは276.1mとそれなりの高さだ。
場所はアーサーの隣人であるフランシスの家。
そう、その建物にはエッフェル塔という名がある。
そんな場所にアーサーと俺は居た。

「アーサー、」

時刻は夜更け。
閉棟時間は過ぎているから、周りに人など居ない。
そんな場所に彼と俺が居るのはただ単純に隠れていたから。
彼は名を呼ばれたことで、外から目を離し俺を振り返った。

「やっぱり見えねぇな、お前んち」
「当たり前だよ」

見えるわけないじゃないか、どれだけ離れていると思っているんだ君は。
と攻めたくなるのを堪えた。
それは、アーサーがどこか悲しげだったから。

「アーサー、もういいだろ。帰ろう」
「……うん」

うんと言いながらもアーサーはその場から離れなかった。
離れるのを躊躇うような仕草に苛立ちを覚える。
アーサー、君は嘘吐きだよ。

「あれ、坊ちゃんとアルフレッド?何してんの」
「フランシス…」

アーサーが驚いたように名を呼ぶから、俺は嫌々ながらに後ろを振り返るとフランシスがいた。
あぁ最悪。

「おいおい、そんなあからさまに嫌そうな顔すんなよアル。ていうか、何でお前等ここに居んの」

ここアーサーの家じゃないよ、とおどけるフランシスに分かってるよと俺は返した。
無意識に低い声が出てしまう。

「フランシス…」
「どうしたんだ、坊ちゃん。顔色悪いよ」
「アーサー!早く帰るんだぞ!」

アーサーに近づこうとするフランシスより一歩早くアーサーに近づき彼の手を取る。
早く帰ろう。
二人を会わしちゃダメだ。
だって二人は…。

「…嫌だ、離せっ」
「、アーサー?」

引っ張ろうとした手を振り払われる。
驚いてアーサーの顔を見ると、今にも泣きそうだった。

「ったく、何?お前等喧嘩でもしたの?」

アーサーの頭を優しく撫でるフランシスに触るなと怒鳴ってやりたかったが、たった今手を振り払われた俺には言えず言葉を飲み込んだ。
そのせいか腹がムカムカした。
どうしてフランシスの手を払わないのさ!

「フランシス、おれ…」
「……いいの?もう戻れないよ」
「いい、戻れなくても。それでも、おれは……」
「分かった、」
「…、何の話だい?」

声に怒気が含まれる。
二人の話の意味が分からない。
全てを話さずとも分かり合える、なんだそれ。
フランシスにはアーサーの全てが分かるとでも言うのか。
俺には、アーサーが何を考えているのか全く分からないというのに…。
にこり、とフランシスは微笑むと手短に椅子を掴み、外と内を隔てるガラスに叩きつけた。
大きな音をたててガラスが割れる。
フランシスは丁寧に人が普通に歩いて通れるぐらいの大きさの穴を開けた。
その作業を終えると、椅子を空へと投げ飛ばした。
椅子は、そのまま重量に逆らうことなく落ちていく。
きっと今頃地面に叩きつけられて、椅子としての機能は失われているだろう。

「君、何がしたいんだい…?」
「んー、下準備?」

笑顔を崩さないフランシスを横目に見てから、アーサーは彼の横から離れた。
やっと帰る気になったんだ、と思ったが違った。
アーサーは割れたガラスの方へ歩んだのだ。
ガラスに強制的に開けた穴からは、外からの冷たい風が入り込んでくる。

「フランシス」
「大丈夫、居るから」

フランシスはアーサーに歩み寄ると、彼と並んで穴の向こうを見た。
最悪だ、もしかして、彼等は。

「ちょ、アーサー!?フランシスもっ!」

彼等は何を考えてるんだ!
早く止めさせないと…っ!
慌てて呼び止めるとアーサーは、先程と同じように振り向いた。
やっぱりその表情は悲しげで、彼の瞳からは遂に涙が零れていた。

「ごめんな、アルフレッド」

なんで泣くの。
なんで謝るの。
嘘、彼の言葉の意味を俺は本当は理解してる。
アーサーは微笑み、フランシスの手を握った。
フランシスが強く、だけど優しく握り返したのが分かった。
それを見ていることしか出来ない俺のどこがヒーローなのだろう。


「さようなら、」

フランシスが踏み出した先は、穴の向こう。
彼と手を繋いだアーサーが踏み出したのも穴の向こう。
彼等に空を歩く力なんてなく。
放り出されたあの椅子と同じように。












ごめん、と小さな声が冷たい風に乗って聞こえたような気がした。
ありがとう、とも聞こえたような気がした。
もう見えない彼等はきっと地面と先の椅子同様お友達になっているんだろう。
俺ひとり置いていって。

「アーサー…、」

どうしよう。
涙が止まらないんだ。







(泣きながら微笑んだ君の顔が離れない)






ごめんもありがとうも、きみにはもうきこえない

end!
米英→←仏。むっつめ。分けわからん。えっふぇるで自殺みたいな。アルがアーサーに告ったとき、既にアーサーはフランシスが好きでフランシスもアーサーが好きだった。でもアルを突き放すことはアーサーには出来なくて、アルと付き合う。アルは偽善で付き合ってくれてるって分かってたけど、いつか好きになってくれると信じて傍に居続ける。アーサーは前もってフランシスに「もし俺が堪えられなくなったら、お前と幸せになれる世界に連れて行って」みたいな約束をしておくんですね。それでこんな状態にアーサーは堪えられなくなって、えっふぇるに嘘を吐いて訪れる(アルの家見えるかなぁーとかそんな感じの嘘)。で、兄ちゃん登場。じゃぁ、俺達が愛しあえる世界に行こう。ぴょーん!みたいな。分け分からん。っていうか、これ米英?

090521



あきゅろす。
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