MARIA 8 その日の休み時間。何となく、葵の教室へ行った。 別に用があった訳ではない。 単純に葵の顔を見たくなったので、廊下を通り過ぎるフリをして。 そんな簡単に見付からない……と思って視線を向けると、葵は一際目立ってそこにいた。 教室の中で、葵は笑っていた。 ――――俺には、見せてくれなくなった眩しい笑顔で。 葵のすぐ隣には、俺の知らない男がいた。その男は遠目に見ても相当いい男で、千夏に負けず劣らず芸能人級の綺麗な顔をしていた。 葵と一緒にいると、美男美女のカップルにしか見えない……。 だから余計、癇に障った。 誰だよ、ソイツ。 知らず、苛々が募り眉間に皺が寄るのが自分でも分かる。 当然、葵はそんな俺の気持ちに気付くはずもなく、存在すら気付かないで、そいつとずっと楽しげに喋っている。 だから、どうしても相手が誰なのか気になった。 [*BACK][NEXT#] [戻る] |