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MARIA
3

――――後日。


一月三十日の俺の誕生日に、予告通り葵が手袋をくれた。ついでにマフラーも一緒に。

「手袋といったら、マフラーもセットだよな。そして凌は絶対、黒だよな」

満足そうな顔で葵が笑った。
俺は、

「……アリガト」

と、一言だけ伝えて微笑んだ。


俺はその日から、冬が好きになった。


そして、現在に至るまでその手袋とマフラーをずっと使い続けている。あの時新しかった手袋も今はもう擦り切れてしまっていて、結構年代を感じさせる姿になっていた。


それに気付いた女の子達がプレゼントと称して俺に手袋をあげる、と言ってくれたりしたけど、俺は一切断り続けた。


勝手に机の上に置いてある物はゴミ箱に捨てた。見かねた母さんにも一度、新しいの買ってあげるから、と言われたけどすぐ却下した。


――――誰に何を言われても、俺はコレを使い続けていく。だって、この手袋とマフラーは葵が俺に初めてくれたプレゼントだから。


ま、別に初物じゃなくたって今まで葵がくれた物は全部捨てずに取ってあるんだけど。


葵はきっと、知らない。
俺が本当に欲しいものを。



――――葵。



きっと永遠に手に入らない。
その現実が酷く、悲しかった。

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