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MARIA
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俺が中学一年になった年のこと。

「何が欲しい?」

家の中で葵と俺の二人だけで過ごすことにはもう慣れている。だからいつものように二人肩を並べてリビングのソファに座りテレビを見ていたら、突然、何の前振りもなく本当にいきなり、聞かれた。

「何?」

「凌、もうすぐ誕生日だろ?俺、バイトして給料入ったし、だから何でも好きな物買ってやる!」

物凄く嬉しそうに葵が言った。そしてバイトと聞いて、あー、と納得出来た。


年末年始にかけて、葵は郵便局でバイトをしていた。中学生を雇ってくれるバイトっつったら、そんなモンしかないけど葵にとって生まれて初めて、自分で稼いだ給料ということになる。

しかし何がそんなに嬉しんだ?と思った。


だって、そうだろ……?
金を使うのは葵だから、俺にプレゼントなんかしたら金が減って自分の好きな物が買えなくなる……。


損をするのは葵なのに、どうしてこんなに笑ってるんだ?


俺は表情を一切変えず、思ったことも口にしないで葵を見つめた。

「……別に」

そんな俺の返答を聞いて、途端に葵の頬が膨れた。

「別にってことはないだろ?一つや二つあるって!遠慮せずに言ってみろよ?流石に一万以上とか、そんな高価な物は買えないけどさ」

ついさっきまで不満そうな顔をしていたはずなのに、すぐ様表情を変え『ほらほら』と期待に満ちた目で葵が俺を見ている。


更に何も言わず、ただ黙って葵を見ていると、

「凌っ」

今度はいても立ってもいられなくなったのか、思いの他切羽詰った声で怒鳴られた。


……だから、つい。
破顔してしまった。


――――可愛イ。

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あきゅろす。
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