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MARIA
7

「――――葵」

「うん?」

でも、俺のそんな些細な願望も所詮は叶うはずもなく。
敬史に名前を呼ばれると、明からに前と違って意識している自分に嫌でも気付く。


それを敬史に悟られないように何でもないフリをして笑みを浮かべる。


そんな自分が酷く滑稽で虚しく感じた。

「葵」

「……何だよ」

二回も名を呼ばれると流石にその先が気になってしまい、つい素っ気ない返事になってしまった。

「何でもない。葵の名前、呼んでみたくなっただけ」

そう言いながら俺の反応が余程ツボに嵌まったのか笑い声を必死で押し殺している様子に、完璧に毒気を抜かれてしまい仕方なしに肩を下げた。

「敬史……。俺、凌に会うよ」

どうしてそんな風に言ってしまったのか分からないけど、多分……自分の気持ちを整理したかったんだと思う。


敬史の傍にいたら敬史のことを考え、凌がいれば凌に靡いてしまう自分の愚かさを恥ながら、それでもこの離れた期間で凌への気持ちが俺の中でどう変化したのか知りたかったんだと思う。


例え一週間だけだとしても俺達はこんなに離れていたことはないから、きっと何かは変わると信じて。

「……葵がいいなら」

その時の敬史は何も言わなかった。だけどその後、俺が寝ている隙に凌に電話して用件を伝えたということだけ聞いた。


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あきゅろす。
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