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MARIA
5

「葵、ちょっといいか?」

夜、風呂でさっぱりした汗をかきタオル片手に濡れた髪を拭きながらコンポで流行りのロックを流していると、敬史がやって来た。


ソファに座って寛いでいた俺は、頭にタオルを被せた状態のまま目線だけを敬史に向けた。

「何?」

返事をした俺の間近に来た敬史は、隣に腰を落ち着かせて座った。

「今日、凌クンに会った」

『凌』と言う単語を聞けば鼓動がいつもより少しだけ早くなる気がする。

「ソッカ。何か話した?」

俺は手の動作を再開させながら敬史の話に耳を傾けた。

「あぁ。葵と、会いたいって。……どうする?」

折角、こうやって離れているんだから今会うべきじゃないのは重々承知している。


それでも……顔を見たいと思うのは、やっぱり血の繋がったたった一人の弟だから?
それとも…――――。

「分かった。考えて、おく」

それ以上先のことは考えるのをやめた。


俺はただ、純粋に弟に会いたくなっている。
今はまだその事実だけで十分な気がしたから。


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あきゅろす。
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